女装しなきゃいけない赤司様!

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降旗は何食わぬ顔でチームメイトの元へと戻った。遅いぞと頭を小突かれたり、火神にとても心配されたりしたが、誰も降旗の様子がおかしいなんて思わなかった。
もちろん黒子も様子がおかしいだなんて思わなかった。しかし、それが逆に不自然だったのである。
もし想いが通じ合ったならば、嬉しい雰囲気が少しは醸し出される筈であるし、失敗していれば憂鬱な雰囲気が醸し出される筈。しかし、降旗からはそのどちらも感じなかった。つまり、彼は意図的に何かを隠そうとしているのだと悟った。

『上手くいっていれば、あんなことする必要ありませんし.....上手くいかなかっということでしょうが、相思相愛なのは確認できたのですが、一体どういうことでしょうか。そもそも降旗くんがあそこまで完璧に感情を塞げるのにも驚きです。』

黒子は様々なことに疑問を感じていたが、他のチームメイトがいる手前すぐには聞くことが出来なかった。


初戦で桐皇学園を撃破した彼らはそれぞれの帰路へとついた。
そこで黒子は降旗を誘い、共に帰ることにした。

「どうだったんですか?」

特に何も具体的なことは言わなかったが、降旗には伝わったようだった。

「征十郎は俺のこと友達として好きでいてくれてるんだってさ。」

苦笑いを零しながらそう告げる彼からは哀愁が漂っていた。

「そんな...」

はずはありませんと続けようとしたが、それは降旗によって阻まれた。

「いいんだ、分かってたことだから。征十郎が俺を好きなんてありえないって。それによく考えたら俺達どっちも男だしさ、俺がおかしかったんだよ。俺が......」

口が止まらなかった。言いたくなんてない言葉が勝手に溢れてきた。まるで黒子に八つ当たりでもするかのように責め立てる口調だった。
それを今度は黒子に阻まれた。


黒子は何も言わずにただ降旗を抱きしめていた。あの時と同じように黒子は泣いていた。降旗の気持ちを全て受け止めるように力強く抱きしめていた。

『家族ってこんな感じなのかな...』

と降旗は思った。気付けば降旗まで涙を流していた。一度溢れ出したそれはなかなか止まらなかった。とめどなく溢れた。














降旗は家族という存在を知らなかった。
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