女装しなきゃいけない赤司様!

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降旗の引き取られた家は会話の無い家だった。降旗を引き取ったのは別れない理由を作るためであった。既に崩壊しているのに、何故別れないのかというとそれは世間体をまもるためというなんとも情けない理由だった。
その夫婦は子供という枷を自分たちに嵌めることによって別れることを防いだのだった。
よって彼らに降旗を愛する気は毛頭なく、引き取ったにも関わらず降旗の名字は降旗のままであった。
会話は必要最低限で行われた。しかし、食事や衣服など必要な物は全て用意されたため不自由などはなかった。

公園へ遊びに行くと必ず目に入る微笑ましい親子。
手を繋ぎ、笑顔で遊んでいる。

『やっぱり僕は普通じゃないんだ。』

何処にいても普通になることのできない自分。もう彼はどうしていいのか分からなかった。



そのままの状態で月日は流れ、今もまだその家で暮らしている。状態は何も変わってはいないが、家族という形をなんとか保ちながら存在している。 


降旗は学校では友達を作り、普通に遊んだ。出来るだけ普通でいようと努めた。

家に帰れば、冷たい空気が彼を纏った。ただいまと小さな声で呟いても誰もその音を拾ってはくれず、おかえりなどと返ってくる筈もなかった。
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