女装しなきゃいけない赤司様!
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降旗はそれがどんな人物だったか覚えてはいない。その出来事だけが脳裏に焼き付いていた。その肝心の人物は影のよう黒い塊にしか見えなかったけれど。それでも降旗は救われたのだ。見ず知らずの彼に。
それからまだ臆病で不格好だけど、笑おうとした。心の底から楽しいと思おうとした。気になる女の子も出来た。その子といると気が紛れるようだった。それが恋なのだと思った。
その子がきっかけでバスケを始めた。そこで出会った愉快な同級生たちと厳しくて優しくて強い先輩たち。彼らとバスケをしていると自分でいられるような気がした。才能の違いに絶望しそうになったけれど、やっぱりバスケは楽しかった。
そして赤司に再び出会った。
そして恋を知り、嫉妬を知り、絶望を知り、楽しいを知り、嬉しいを知った。あの女の子はただ寂しいを埋めるための勘違いだったのだと気付いた。
そんな赤司の側にも彼はいれない。
降旗は今日も独り、カクレンボして遊ぶ。