女装しなきゃいけない赤司様!

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WCも終了し、赤司は一度本邸へと足を運んだ。それは彼の実父に決意を伝えるためである。赤司は征華を捨てるのだ。

ホテルの最寄り駅から本邸までは10駅分。赤司は電車に乗り込んだ。財閥の息子だからといって常に車や飛行機なんかを使っていると思うのは間違いだ。赤司は電車も新幹線も使う。それが統べる人間になるための努めだと学んだから。
5〜6駅移動したくらいからビルの数が減り、木が増えた。空が少し曇ってきた。赤司は窓の外を眺めながら思うのだ。
時間だってこの景色のように流れるものである。とても速く。この電車の速さよりももっと速く。ただ距離が長いだけ。事故にあう人間もいれば、何事もなく進んでいく人間もいるだろう。どんな車両に乗っているのかなんて分からないが、同じ車両に乗っていても全く別物に見えるだろう。人間なんてそんなもの。別なのだ。一緒なんてありえないのだ。
だから“死”だって当然やってくる。いつ迎えるのかなんて知らないし、分からないけどやってくるものはやってくる。どんなに明るい未来への道が繋がっていようと脱線すればたどり着ける筈もなく。
目指しても目指しても何もないかもしれない。そしてそのまま落ちていくのかもしれない。
どんな形であろう道を走る限り、死は当然のようにやってくる。
それをねじ曲げるなんてできない。どんなに必死に取り繕って誤魔化そうとしてもそれは真実ではなく偽物。不毛なのだ。そんなもの。



    





征十郎がいくら必死に征華になろうとも征華にはなれない。征華は死んだのだ。事実は時に何よりも残酷だ。鋭い牙を剥けてける。それをいくらやすりで和らげようとしても食われてしまえば終わり。









プシュー




本邸まで残り15分

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