ショウセツ
□桃源郷
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―コンコン。
「はい、どうぞ」
夜更け、廊下の小窓から月の光に射され静まり返った聖騎士団寮の一室。
そこに少々大きめなノック音が響く。
「…起きてやがったのか。」
扉が開き、部屋中に響く低い声の主は赤と白を身にまとった男。
「ソル…。珍しいですね、貴方が私の部屋を尋ねるなんて。」
「あぁ、ちょっとばかり坊やの顔を拝みたくなってな。」
坊やと呼ばれる部屋主、カイはデスクに体を向けたまま
「冗談を。…何の用事ですか?」
「…本当になんでもない。暇潰しだ。」
そういうと無表情のままソファに腰をかける。
「あまり夜更かしをすると、また朝がつらくなりますよ。」
ようやくデスクから離れたカイはソルから人一人分開けてソファに腰をかけた。