ショウセツV

□死んだ方がマシという言葉
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「そうだな」

分かっていたものの、胸にきつく苦しい何かが入り込んできた。

一緒に過ごす時間
減る会話

隣を歩く彼の顔はとても険しくて。
出会った頃のように他人顔。

そこに愛なんて少しもないことを感じさせるその表情に

カイは涙をためる。

それが零れ落ちないように
必死に前を向いて

何度か青い空を見上げた。

風が涙を乾かしてくれる
その度、視界に入る彼の横顔が

また、繰り返させる。


「ソル…」

何を言いたいわけでもないが
口が自然と彼の名前を呼ぶ

その呼びかけにこちらを向く相手の顔は相変わらずで、また胸に深く。

「なんだよ」

普段より少し低めで
面倒だということを感じさせる

怖い声が聞こえた。

「私のこと、もう好きではない、だろう」

途切れ途切れ
泣いてなどいないとアピールするように

少し笑って見せた。

「んなことねぇよ」



そんなことを聞きたいんじゃない。

ただ、一言

スキだといってほしいのに。


そうやって
どっちつかずだから、人間は悪い方向に考えて

そして勝手に傷ついて

一人でパニックになって


余計、相手の愛を薄くさせる。


解っているのに

それに心がついていかない。


だから、ここで

だめだと解っているのに、

こんなこと
ソルは嫌うのに、


下を向いて、泣いてしまう。


 
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