alias 〜偽名〜

□第三章「cruel 〜惨劇〜」
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そして、気が付いた時に、まず、考えたことは

俺「喧嘩か……?」

しかし、こいつ達は明らかに刺し殺されている。そして、奴隷であるこいつ達が刃物を持っているはずもないのでこれはまず無いだろう。

俺「しかも、見事に全員死んでるしな…ネッドが殺した…?」

いや、そんなハズは無いだろう、いくら奴達一人が晩メシの内の一品程度の値段しかしないとはしても、少なからず損害にはなる訳で、あのケチのネッドがそんな馬鹿げたことをするハズは無い、それに、ここにいる全員を殺すことはあのデブには到底出来ないだろう。

俺「っていうかあのブタじゃ一人でも返り打ちだろうしな、」

そんなことを考えると、ふと思いついた、

俺「そうだ、ドアの鍵、」

通常この納屋にはの(鉄枠の)ドアには、奴隷達が逃げ出さないよう、外側から鍵がかけてある。つまりそれが外れていれば俺は逃げ出せるのだ。

しかし、それは確認するまでもなかった。何故なら、かつてドアの部分であったであろうその部分は、見事に切り出され、床に転がっていたからである。

俺「ここの床に鍵が転がってるってことは、外から、しかも無理矢理に入って来たってことか…」

しかも、複数人が殺されているにも関わらず、多少立ち上がりかけた奴もいるようだが、誰一人として出口へ逃げようとしたり暴れたりした形跡は無い。つまり、相手は多人数で、しかも中に入った後、恐ろしく迅速に全員を殺している。こんなことが出来るのは恐らく、きちんと統率の執れた盗賊団か、でなきゃ軍隊くらいのものだろう。

俺「こんな辺境に軍隊が来る訳ぁねぇよな、っとなると盗賊団か…」

俺は息を潜めた、これだけ派手に殺しをしているとなると、この辺一帯はもうそいつ達の手に落ち、近くにそいつ達の仲間がいるかも知れないからだ。

ここに居てはいずれ見つかる、かと言って逃げだしても奴達に見つかるかも知れない。それに、衝撃で忘れかけてはいたが、俺は寝起きで喉が渇き、腹も減っていたので俺はまず、いつもの食料配給用の小窓から、ネッドの家の様子を伺ってみた、そして見えたのは、俺には到底信じ難いものだった。

そこには二人の男が、互いかに向かい合った形でイスに腰掛けており、片方の青服の男は、酒瓶を持っており、彼の周りには空になった酒瓶がいくつも転がっていた。

青い制服の男「いやーしかし、いくら全国を統一しなきゃならねぇっても、こんな酒場もねぇようなしけたところまで来る必要があったんかねぇ、まったくもって貧乏クジを引いちまったぜぇ、」

赤い制服の男「そう言うな、それにこんな郊外だからこそ、こんな大胆な搾取ができるんだろう。そう思えば、結構アタリだったと思うぞ?」

青い制服の男「まぁ、確かにそれはあるな、ただよダンナ、ウチの軍と行動してるときにゃぁ『搾取』ってぇ言葉は使わない方がいいぜぇ。何故ならウチの教祖のセルシオ様はよぉ、『これは決して侵略では無い、主政権の失われた元クィビスタレナの混乱を静め、さらに、これからは我等が三国が協力し合い、より良い社会秩序を創って行くということを示すための行動である』とおっしゃっていらっしゃりますからよぉ、しかもウチの連隊長殿はそれを本当に信じていらっしゃるからよ。まぁ、セルシオ様を信用している者でないと、ウチの国では偉くなれないってのもあるだろうけどよぉ」

赤い制服の男「そうか、では気をつけるとしよう。ところで、先程から思っていたのだが、いくら警戒体制でない、ただの見張りとはいえ、任務中に酒を飲んでいて良いのか?しかも、もうかなりの量を飲んでいるように思うが?」

青い制服の男「あぁ〜?いいぢゃねぇかちっとくれぇ、それともアレかぁ?ムスペルの軍人様は皆、石みたいにお固くて酒も呑まないってかぁ〜?ったくよぉ、こんな赤い堅っ苦しい男よりも、どーせならフライアの綺麗なねーちゃんと組みたかったなぁ…」

これではっきりとした、そこにいる青い服の男はニンフィディアの、赤い服の方の男はムスペルハイムの兵士であり、最近首都で起こっていたごたごたとは、他三国との戦争のことだったらしい。しかもクィビスタレナは既に負けており、他三国の支配下におかれ、事実上搾取を受けているようだ。

俺「ちっ、まずいことになってやがるな、」

そう思いつつ、見つからないよう、俺は静かに小窓を閉め、後退りをした。しかし、次の瞬間、

ガッ、バターン!

俺は一瞬、心臓が止まりそう(もしかしたら本当に止まったかもしれない)になった。なんと、俺としたことが、開けっ放しにしてあった収納庫の蓋に足をひっかけてしまったのだった……

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