alias 〜偽名〜

□第四章「murder 〜殺人〜」
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………っく、俺としたことが、

俺は気付かれていないことを、半分祈るような気持ちで耳を澄ませた、すると

ムスペルハイム兵「ん?なんだ、隣からの今の音は、なあ、キミも聞こえただろう?」

ニンフィディア兵「あぁん?ウチの母ちゃんのイビキはあんなじぁねぇよ、もっとスゲェ、雷みたいな音がすんだぁ、」

ムスペルハイム兵「おい、しっかりしろ!ったく、だから呑み過ぎだと言ったんだ。まぁ、とにかく、私は一応確認の為に隣の納屋に行って来る、ここは任せたぞ。」

ニンフィディア兵「うーい、行ってらしゃいませぇ〜またのお越しをお待ちしておりますぅよぉ〜っと、」

ムスペルハイム兵「はぁ…本当に大丈夫なんだろうな…まぁ、どうせ何も起こりはしないだろうがな。」

俺「ちっ、やっぱ気付かれたか…仕方ねぇ、」

俺は、今、倒した蓋を引き上げると、すぐにそのなかに入り、急いで、しかし音は立てないよう蓋を閉め、息を潜めた。

ギィ、バタン

その後、(恐らく「元」)ネッドの家のドアの閉まる音がして少しすると、納屋のドアの開く音がし、あのムスペルハイム兵が納屋に入って来た。

キィ…コツコツコツコツ……

ムスペルハイム兵「ん…やはり、誰も居ないな、さっきの音は聞き違か………む?」

ムスペルハイム兵は、真ん中まできて、また入口へと向かってい(てくれ)た足の方向を、突然変え、収納庫のある奥へとまた歩き始めた。

俺「(ちっ、あんだよ、とっとと行っちまえよ)」

そう思ってから、俺は初めて自分の犯してしまった重大なミスに気が付いた。なんと、起きた時に蓋から落とした奴隷(だった物)の服の裾野を、とっさに蓋を閉めた時、中に挟み込んでしまっていたのだ。

俺「(くっ、こうなったら)」

俺は、静かにいつでも思い切り起き上がれる体制を作り、覚悟を決めた。

ムスペルハイム兵「これは…収納庫か?」

そして、ムスペルハイム兵が蓋を開けようとしたその瞬間!俺は、力の限り思いっきり蓋を、そいつに叩き付けるようにして起き上がった!

ガツンッ!!!

ムスペルハイム兵「っぐ!?」

俺は、そのまま倒れた兵士の上に馬乗りになると、間発入れず右手で奴の腰から剣を抜き、逆手のまま、両手でそれを奴の喉笛に突き立てる!

ムスペルハイム兵「ぬぐぁ!?がっはっ!」

哀れな兵士は、そう、叫ぶと息絶えた………

俺「ハァ、ハァ、ハァ…」

やっちまった、いくら敵とはいえ、俺は今、人を殺してしまったのだ。

俺「以外にあっけないもんだな…」

こんなことだったら、とっととネッドを殺して逃げ出していればよかった………

俺「っとこんなこと考えてる場合じゃねぇな、」

何時、さっきのニンフィディア兵が来るともわからない(どうせ来ないとは思うが)俺は、兵士(だった物)から降り、他の奴隷(だった物)の中から比較的、服(とは名ばかりのボロ切れ)に血の付いていない物を探し、それを裂いて奪うと、未だムスペルハイム兵(だった物)の喉笛に刺さっている、剣を引き抜き2、3回振り払うと、それで血を拭い、奴のサヤに納めた。さらに、そいつから制服を脱がせると、それに付いている血も拭った。

俺「ふぅ、制服に血は…まぁ、これくらいなら大丈夫だろう」

俺は、さらにそいつの着ていた鎖帷子(くさりかたびら)を脱がせると、それを見に付ける。そして、その上に先程のムスペルハイム軍の制服を着込む。

俺「長袖の制服で助かったぜ……(まぁ、半袖や袖無しの制服など聞いたことが無いが)」

俺達奴隷は、逃げても捕まった時にすぐに持ち主が解るよう、左肩に焼き印が押してある。つまり、これが見えてしまっては変装の意味が全く無いのだ。

俺「これで良しっと」

最後に俺は、倒れた衝撃に転がっていた軍帽を深めに被った。

俺「あとは、そうだな…」

逃げた後、追手が来るのを遅らせる為、俺はこの哀れなムスペルハイム兵を埋葬(?)しておくことにした。

俺「よい、せっと。」

日頃の重労働のお陰か、軽々とまではいかないものの俺はそいつを、自分の寝床であった収納庫に放り込み、(今度は服を挟まないよう注意しながら)蓋を閉めた。

俺「よし、逃げるか」

俺はそう言うと、未だかつて、自分で開けたことの無かった、自分の家のドアを、開け放ったのであった……

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