alias 〜偽名〜

□第五章「liberation 〜解放〜」
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しかし、外に出ようとしたところで俺はふと思い溜まる。

俺「そういやさっきの…」

俺は、今や床下で発見され(無い方が好都合だが)るのを待つばかりとなったこの服の元持ち主、そいつと話をしていたへべれけニンフィディア兵のことを思い出した。

もしも奴が、先程の言付けやその後の物音を聞いていたとしたら、不信を感じて見回りに来るかも知れないからだ。

俺「ちっ、確認しとくか…」

俺は再び小窓の前に戻り、こっそりと覗きみようとした…が、

グガーゴゲゲゲーー、ガッ、グガー

俺「……………」

俺はなんとなく行き場の無い怒りを感じつつ、再び納屋への出口へと向かった。

よく考えたら、自分の意志で外へ出るのはこれが初めてなのだ。

俺は、ガラにも無く、少しだけ沸き立った気持ちで、外へ出たのだった。

俺「さって、どうすっかな…」

そして、外へ出た俺は、おもむろに制服のポケットに手を入れると、

俺「ん…?これは…」

それは、小さな金属の板だった

『ムスペルハイム軍 第246歩兵師団 ロメア・レリューミスト 1等兵』

俺「ふむ………こいつは、使えるな。」

それを見つけた時、俺の中に、ある一つの考えが浮かんだ…が、

俺「んなことよりも脱出か、」

俺は、その板を再びポケットにしまい込むと、今まで何年も見てきたにも関わらず、歩くのはほんの2回目である(一回目は、忌々しい。俺がネッドの元に売られて来た時だ)、村の出口への道を歩き始めた。

ザッザッザッザッ…

俺「しっかし、これで本当にこの村は侵略されてんのかねぇ、」

いつもの朝に見るのどかな風景を見ていると、先程の凄惨な光景が、もしや、全て夢だったのでは無いかと思えてくる………

いや、でも、あれは決して、夢なんかじゃ無かった、

俺「夢は服なんかくれないしな」

そんなことを考えつつ、村の出口(だったと記憶している)方に近付いて行くと、なるほど、即席の見張り小屋のような物が建てられている。

俺「ここさえ抜ければ…」

俺は、更に帽子を深く被ると、その検問所(だと思われる小屋)へと近付いて行く。

そして、その小屋の手前へと到着すると、中から愛想の悪そうなニンフィディア兵が一人、面倒くさそうに出て来た。

ニンフィディア兵「ムスペルの兵士か、どうした?」

俺「いや、ちょっと隣の村に用事があってな、」

ニンフィディア兵「む?そんな連絡は受けていないが?」

俺「実はちょっと問題があったらしくて…いや、私でなければ鎮められないらしくて、緊急らしいんだ。」

ニンフィディア兵「ふむ…まぁ、他の軍のことだしな。貴様、名前は?」

俺「第246歩兵師団のロメア・レリューミスト1等兵だ、」

ニンフィディア兵「1等兵のレリューミストだな、少しそこで待っていろ。」

そうするとその兵士は検問所の中へと入っていった

今なら突破できる…いや、それで追手を差し向けられては意味が無いか…そんなことを考えていると、先程のニンフィディア兵が、これまた面倒そうに顔だけを出し…

ニンフィディア兵「確認した、もう行っていいぞ、」

それだけ言うとその兵士は、すぐに引っ込んでしまった。

俺「随分適当だな…」

俺は、少し拍子抜けしたが、無事に、そして初めて村を自分の意思で出られたことにまた少し感動しつつ、俺は二度と戻らぬであろう村を後にしたのだった…

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