過去拍手文
□その狼、凶暴につき
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月と太陽がその役割を代わる、明け方の時刻。
開け放たれた窓から入る微かな日の光と鳥の囀りに、エニシアは目を覚ます。
窓辺には隣に寝ていた筈の男が、煙草をふかしながら佇んでいた。
「もう身支度してる……先に起きたのなら、起こしてくれれば良かったのに……」
「まだ明け方だ。起きるには早ェし、もう少し寝てろ」
そう言って深く煙を吐き出す男。
鼻孔を擽る独特のその匂いは、エニシアにとっては目の前の男の匂いと言ってもいい程に馴染みのものとなっていた。
エニシアはシーツを胸の前に持ってきて、男の側に行きたいらしく立ち上がろうとするのだが……何故か立ち上がれないようだった。
必死にシーツで体を隠しつつ、よろよろと立ち上がろうとしては苦戦する姿に、男はクックッと愉快そうに笑みを零す。
「わ、笑い事じゃないですっ!」
「そうか?見てると結構面白ェが」
「う……ι////」
諦めたのか恥ずかしいのか、そのままヘタリと座り込み、シーツに顔を埋めるエニシア。
男は煙草を灰皿に押し付け、ベッドの横に歩み寄る。
「どうして立てねえか、教えてやろうか?」
「はい……。ま、まさか病気とかじゃないよね?」
「違ェ、一時的なもんだ。病気じゃねえよ」
「……?」
いよいよ真相はわからなくなり、エニシアは小首を傾げながら、事情を知っているらしい男に説明を求める。
「……あんな表情で甘い声出しながらしがみつかれたら、流石の俺でも理性が飛ぶからな。腰だって抜けるだろうよ」
──耳元で、重低音の声が囁く真実。
エニシアの顔が、一瞬にして赤く染まった。
「で、でもね、昨日は貴方が……そのっ……////」
「ああ、確かに俺に非がある。責任を取るべきだな」
「そんな……そうじゃないの。そんなつもりで言ったんじゃ……狽ミゃっ!?」
しどろもどろになりながらも、攻めているつもりではないと主張するエニシアだったが――突然、纏っていたシーツが剥ぎ取られる。
男はさも当然と言った様子で、目を丸くするエニシアの耳元で囁いた。
「責任取って……とことんやってやるよ」
「それって違……あ……んん…っ!」
その狼、凶暴につき
(お姫様が食べられた!)