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□盲目的な恋心
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穏やかな日の光が降り注ぐ、のどかで緑溢れるミントの家──だが、家の中の様子はその外観とはまるで対照的だった。


机を挟み、向き合って座る二人。笑顔ながらも背後にどす黒いオーラを漂わせるミントと、相変わらずヘラヘラと締まりのない笑みを浮かべる金髪の医師。

いわゆる修羅場である。



「私、言いませんでした?せめて、私の見てる所では女の人に声をかけないでねって」
「いやー、美しい女性がいたら声をかけるのは男の義務ですから」
「そういうことを平気で言うのは、一体どの口なのかな」
「ひまあなひゃあいえっひぇるうひれふえー(今貴女が抓ってる口ですねー)」



笑顔のまま男の頬をギリギリと抓るミントだが、男が反省の色を浮かべる気配は無い。それどころか、ミントの反応を楽しんでいる節さえある。
その様子に怒る気力すら無くしたか、ミントは男の頬から手を離し、小さく溜め息を吐いて俯いた。



「これでも恋人なのに……先生は、私だけ見てはくれない。そういう性格なのはわかってるけど、恋人の私の目の前で他の女の人に声をかけられると──私じゃ駄目なんだって言われてるみたいに思えて……」
「先生にとって、私は他の女の人で代わりが利く程度の存在かもしれないけど……私には、先生の代わりなんていないんだよ」



俯いた瞳から、涙が雫となってポロポロと零れ落ちる。

男はミントの頬に手を添えて顔を上げさせると、涙をそっと拭い取った。
そして涙で潤んだ海のような双眸に、金の眼を細めて優しく微笑みかける。



「私にだって、ミントの代わりになる女性などいませんよ。貴女の目の前で、他の女性に声をかけたことは謝ります。ですから、泣くのは止めて下さい……恋人の涙程、私が望まないものは無いのですから」
「先生……私……」



ミントの当初の勢いはどこへやら。頬に触れる男の手に自らの手を重ね、うっとりとしたような表情を浮かべている。

自体は丸く収まり、ハッピーエンドで一件落着──ではあるのだが……したり顔で立派なことを言っている金髪の医師の女癖の悪さがそもそもの原因であることを、ミントは覚えているやらいないやら……。




盲目的な恋心

(やー、女心って難しいですよねー)

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