過去拍手文

□惚れた相手は
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目を引くその眩い金色の髪同様に、わたくしめの心を惹きつける貴方。
甘い言葉で近付いてきてはふらふらと去っていく、移り気な方。



「ポムニットさーん、私の話聞いてますかー?」
「……聞いてます。何度も申しますが、わたくしめにはまだお仕事が…」
「あっは、仕事なんてささっと終わらせちゃえばいいんですよ」



……これでも医者だと言うのですから、何とも驚きですι

ケラケラと笑う貴方に、わたくしめは困ったように微笑みます。流石にお屋敷のお仕事を放り出して誘いに乗るわけには参りません。
……まあ、お仕事が無かったら乗っているところでは御座いますが……////


貴方は暫し考え込む素振りを見せた後、パッと笑顔を浮かべました。



「忙しいみたいですから、今日はお邪魔にならないうちに失礼するとしますか」
「はい、申し訳ありませんが、今日の所はそうして下さると……」
「た・だ・し!」



視線の位置ををわたくしめに合わせ、貴方は目の前で人差し指を左右に振って見せました。
その行為にたじろぐわたくしめを余所に、貴方は再びにっこりと笑顔を浮かべます。
「今度こそは付き合って貰いますよー。貴女が忘れられない一時をすごせるように、美味しいお茶と甘い言葉を用意しておきますのでvV」



そう言いながら、芝居のかかった大袈裟な動きでわたくしめの手を取ったかと思えば──手の甲に、手袋越しに伝わる男の方の唇の感触。
自分の頬が、急激に熱を帯びていくのを感じました。

唖然としつつも赤面するわたくしめの様子に満足そうに微笑むと、貴方は踵を返して何事もなかったように去っていってしまいました。




一人残ったわたくしめは、未だにぽーっとした状態のまま、先程の手の甲を見つめました。

あの方がああいう性格であることは、勿論知っております。
甘い言葉は、わたくしめ以外の女性にも用意してあるのでしょう。



「どうして、あのような方を好きになってしまったのでしょう……ι」



軽い自己嫌悪に陥ったわたくしめの溜め息は、あの方の眩い金髪を思わせる太陽だけが聞いていました。




惚れた相手は

(女たらしで浮気性で軽薄!)

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