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□妖し狐に御用心!
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薬売り(というお仕置き中のシノビ)の女性、アカネ。
今日は水道橋公園にて薬を売ろうと頑張っていたが……殆ど売れない様子だ。

次第に人の姿もまばらになり、がっくり肩を落としつつも場所を変えようと商品を片付けるアカネだったが──。



「おやおや、今日もご苦労様です、アカネさん♪」
「狽ナぇ……っ!?」



不意にかけられた声の主を確認するや、表情が引きつる。
そこにいたのは、この町で診療所を開いている金髪の医師。



「ど、どうしたの先生。今は診療時間の筈でしょ?」
「ふふっ、貴女に会いたくて早めに終わらせたんですよーvV」
「へ、へぇー。折角会いに来てくれたのに残念だけど、アタシこれから別の場所で売ろうと思っててさ〜。……じゃっ、そういうわけだから、さいならっ!」



何とか逃走しようとするアカネだが、いつの間にか男がアカネの肩に手を回していたため、逃走は失敗に終わる。



(え?シノビのアタシより何で速いわけ?この藪医者ι)



……きっと煩悩のなせる技だろう。



唖然とするアカネを余所に、男はしたり顔で口説き文句を吐く。
「それは大変ですねぇ。ですが、美しいアカネさんが落ち込む姿……それを見ているのは心苦しいのですよ。そんな貴女の心を癒やすために、これから私の部屋で、一緒に愛を育んでみませんか?」
「いや、必要ないから、マジで!って言うか何でアンタの部屋!?育むどころか食べる気満々じゃん!!」



肩を抱いていた手は何時の間にか腰を抱き、もう片方の手でアカネの顎をクイッと持ち上げる。
愁いを帯びた瞳で見つめられれば、普通の女性なら落とされてしまいそうだが──そこは流石シノビか。的確なツッコミを入れつつ、男の腕を抜け出す。



「冗談じゃない!こんな男に付いていって、遅くなったなんてお師匠に知れたら……狽、わぁーっ!無理、もう生きていけない!!」



顔面蒼白状態のアカネは、目にも留まらぬ速さで商品を片付けると、突風のようにその場から消え去った。
残された男はその速さに呆気に取られるが、すぐにクスクスと微笑を浮かべる。
「なかなか振り向いてくれないからこそ……落とし甲斐があるんですよねぇ」



妖し狐に御用心!

(これもお仕置きの一環ですか、おししょー!/泣)

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