●心歪み編●

□第五章 〜変動〜
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朝の白い光が顔を照らした。
俺は光が顔に当たらないように寝返りを打つと、曖昧な意識のなかで微かに聞こえる声を感じた。




「……いち、け……ち!」


「うーん……」


「……圭一!起きなさい圭一!もう朝よ!」



うるさいなー……
今日は学校は休みだろうが…

お袋は曜日感覚までなくなったのか?



「今日はお友達と遊びに行くんじゃなかったの?もう九時よ」


「………九時?」


……………………


しまったぁぁあああ!!!!


今日は興宮でゲーム大会があるんだった…!!


ちなみに集合時間は…
九時半だ。残り時間は三十分しかない。


遅刻なんてしたら…ヤバイ事になる…ッ!!!



『明日は時間厳守だからね!…もし遅刻なんかしたら…分かってるよねぇ?』


ふいに魅音の言葉が頭をよぎった。
…俺はまだ死ぬワケにはいかないッ!!!


「っつーか、こんなこと考えてる時間があればさっさと行動しろよ俺!!!」


俺は一人で乗りツッコミをすると急いで着替えをし、一階へと向かった。









「母さん、悪いけど朝ご飯いらねぇかも」


「あら、朝はしっかり元気つけないと体に悪いわよ」


お袋は心配そうに眉を下げて朝食を用意をしながら尋ねた。


「時間が時間だしさ…遅刻したら生きて帰れねぇかもしれないし」


「…圭一…」


お袋はいきなり手に持っていた食器を落とした。
食器は派手な音を立てて割れてしまった。


「…か、母さん?」



「圭一…やっぱりご飯はちゃんと食べなきゃダメよ…!しっかり体力をつけないと心配だわ…」


「…は?いや」


「男の子だものね。よくある事よ…でもね圭一、頑張って立ち向かってね。
それを乗り越えれば立派な男の子になれるわ」




……あの、何の話ですか?


多分お袋は「これから喧嘩に行く」と勘違いしたのだろう。


遅刻したら生きて帰れない…なんて言わない方が良かったかもしれない。



「…と、とにかく俺はもう行くから!行ってきますッ!」


「あ…圭一!」


俺は片手をスチャッと挙げると振り返る事なく、玄関に走っていった。

背後で「根性」や「気合い」やらの異様な単語が飛び交っているが敢えて気にしないでおく。










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