●心歪み編●
□第七章 〜試練〜
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「……沙都子……今日も学校、来なかったな」
俺は学校が終わると、叔父と沙都子が済んでいる家の方向に向かっていた。
沙都子はあのゲーム大会の日から一度も学校に来ていない。
…あの叔父にまた家事をさせられているのだろうか。
…家事をさせられているだけなら、まだいい。
でも…もし沙都子の体にアザがあったりしたら……俺は、叔父に手出ししないと言い切れないかもしれない。
今でさえ叔父が目の前にいたら殴りつけて沙都子に土下座させてやりたい程に苛立ちを感じている。
否、それだけで済むのならまだマシなのかもしれない。
「…くそっ…。まだ着かないのかよ…」
俺は早歩きで足を進めているにも関わらず目的の家が見えてこない事に何とも言えない苛立ちともどかしさが渦巻いた。
「沙都子に何かあったら…絶対に許さないからな…!」
俺は叔父に届くはずもない言葉を吐くと、早歩きから走りへと速度を変えて行った。
「あれ?圭ちゃんはもう帰ったの?」
「…圭一くんは多分、沙都子ちゃんの様子を見に行ったんじゃないのかな」
「そっか…。……沙都子、あれから学校来ないね」
「…沙都子にはゲーム大会で少しでも元気になってほしかったのです。けど、今は…」
「…元はと言えば、おじさんがあんなチラシを持ってきたからだよ。本当にごめん…」
「…!違うのです、誰も魅ぃを責めてはいないのです」
「そうだよ、魅ぃちゃんは沙都子ちゃんのために企画してくれたんだよねっ…?」
「…けど、結果ああなってしまった。おじさん達も沙都子の家に行って元気かどうか見たいけれど…」
「…もし僕達と話してサボっている所を叔父に見付かったら、後で何をされるか分からないのです」
「うん…圭一くんは行っちゃったけど、良かったのかな…」
「…圭ちゃんは止めても聞かないよ。多分今は沙都子の事で頭がいっぱいなんだと思う」
「…圭一が誤った方向に考えなければ良いのですが…。…たまに突っ走る時があるから心配なのですよ…」
「え?」
「……何も、ないのです」
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