●心歪み編●

□第八章 〜決意〜
1ページ/17ページ




『にーにー!詩音さん!早く早く、こっちですわ!』


『ま、待って下さい沙都子…走るの早すぎ!』


『あはは、沙都子は本当に元気だね』



私達は三人で興宮のスーパーに買い物に来ていた。

私はこの三人で居れる時間をゆっくりと楽しみたいのに、そんな私の心情なんてお構いなしに沙都子は元気良く走っている。



『…全くもう、あの小さい体のどこにそんな体力があるのか知りたいところですよ』


『むぅ…それは確かにそうだね。沙都子は昔から外で遊ぶのが好きだったからかな』


『なるほど…野生の子猿だったというワケですね』


『や、野生の…!?』


悟史くんは私の返事が意外だったらしく、目を丸くさせて驚いていた。


『お二人とも、何を話しているんですの?』


『わっ!?ビックリするじゃないですか!』


突然、沙都子が私達の前に立って首を傾げていた事に気付いた。

多分、来るのが遅かった私達を呼びに来たのだろう。



『で、何の話をなされていたんですの?』


『…ふふ、沙都子には秘密ですよ♪』


当然の事だが、さすがに面と向かって「沙都子が子猿だと言った」だなんて言えないから、わざととぼけてみせた。


『ななっ…!?私だけに秘密だなんて……にーにー、教えて下さいませ!』


『うーん……えっとね、沙都…むぐぐっ!?


『シーッ!ダメですよ悟史くん、沙都子のためだと思って秘密にしたんですから』


『うう…お二人だけで内緒話だなんてズルイですわー!!それに私のためって…意味が分かりませんものー!』


『そんなにカリカリ怒らないで下さい、血圧上がりますよ』


『怒ってませんもの!……怒ってないもん!』


沙都子は必死に反論してきたが、明らかに怒っているのは誰にでも分かる事だった。







.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ