●心歪み編●

□第四章 〜憎悪〜
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「沙都子ォ!!!さっさと用意せんかい!!!」



「は……はい…。ごめんなさいッ…」



叔父は部屋で麻雀をしている。
友達も四〜五人ほど来ているようだ……
さっきから男性の野太くて低い笑い声が私のところにまで響いてくる。


私はというと、台所で包丁を握って野菜を切っている。
叔父の友達の夕食も用意するように言いつけられたからだ。


おつまみを用意したり……

ビールを用意したり……

夕食を用意したり……



台所に立って、かれこれ三時間になる。
男性がたくさん集まれば料理だってたくさん用意しなければいけない。
次々と料理を追加するように命じられているから、休む暇は無かった。



「……!!!痛ッ…」


包丁で指先を切ってしまったようだ。
蛇口を捻って水で洗い流すが、どんどん血が溢れる。
どうやら思ったよりも傷は深いらしい。


「…バンソウコウ……」


私はとりあえず傷を塞ぐために絆創膏を探しだす事にした。
…だが、どこを見渡しても絆創膏なんてない。


「沙都子ォ!!!さっさとせんかいダラズがぁ!!!!」



「……!!!ご、めんなさいッ…ごめんなさい…!!」



叔父は私が遅かったために、シビレを切らして台所に来た。


「あ、あの……私、傷が…。だから少し待って下さ…」


「あぁ!?傷!?そんなモンどうでもええ!!
さっさと乾きもん持って来んかい!!!」



「…ごめんなさい…ごめんなさい…」



叔父は私に罵声を浴びせ終えると舌打ちをして部屋へと戻っていった。
部屋から再び叔父の笑い声が聞こえてくる。


私は絆創膏を探すのを諦めると、もう一度だけ水で洗い流した。

ドクドクと傷口が脈打っているのが分かる。
だが傷口を気にしている暇はない…。


痛む傷口を堪えながら、私は料理をし続けた。

足の裏がジンジンと痛みを増してくる。
三時間以上も立ちっぱなしだったので疲労感が襲ってきた。




……これぐらい、
我慢しないと……
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