●心歪み編●

□第五章 〜変動〜
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俺は自転車の鍵を出そうとポケットに手を入れたが、いくらポケットの中を探っても鍵は見付からない。

こんなクソ急いでる時に鍵が見付からないなんて…どういう事だコラァア!!??


俺は家に忘れたのかと思い、玄関の扉を開けて靴箱の上を探してみたが見当たらない。



「か、母さん…自転車の鍵はなかった?」


「え?もう…圭一またなくしたの?探せば見付かるはずよ」


見付からないから聞いてるんだろうがッッ…!!!
焦ってイライラしている時は、誰の言葉にでも余計にイラついてしまうのが人間なんだと思う。



とりあえず俺は玄関の扉を閉めて自転車置き場へと向かった。



「鍵がかかってない自転車を使うか…。サイズがデカイから漕ぎにくそうだなー…」


俺は半ば諦めモードになると家に余っている古く錆びている自転車を眺め、ふと自分の自転車に視線を移した。



…俺の自転車には、
しっかりと鍵穴に鍵が差しこんであった。


「ちょ…マジかよ!!ずっと自転車に差したまんまだったってワケかよ…!!!」


自転車に鍵を差したまま日にちが過ぎ、再び自転車に乗るときに鍵がないと騒ぐ。


…実によくある現象だが……


遅刻寸前となるとかなり腹が立つなオイ…!!!!




「とにかく…助かったぜ!早く行かねぇとなッ…」


俺は自転車のペダルを足で数回カラカラと回すと、全力失踪で集合場所に向かった。













「遅ーーいッ!遅すぎるよ圭ちゃん!」


「圭一くん、おはよう〜!今日はお寝坊しちゃったのかな?かな?」


レナと魅音はいつもの集合場所で待ってくれていた。
レナは怒る様子もなく笑顔だったが、魅音は不満そうに唇を尖らせている。


「げっ…やっぱり遅刻だったのかよ?」


「5分38秒の遅刻だよ!まったくもー、時間厳守って言ったでしょ」


「わ…悪ィ!ちょっと自転車の鍵が見付からなくてよ」


「言い訳無用ー!圭ちゃんは今度にでも罰ゲームだねェ」


「み、魅ぃちゃん。圭一くんも反省してるんだし…あんまりイジメちゃ可哀想だよ」


魅音がからかうように俺に怪しい笑みを向けると、レナがわたわたと慌ててフォローしてくれた。



「ま、それもそうだね。じゃあ皆、早く行っくよー!」


俺達は沙都子と梨花ちゃんと合流するために自転車を漕いで行った。










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