●心歪み編●

□第八章 〜決意〜
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『あはは、絶対に言いませんよーっ』


『ひ、ひどいですわ詩音さんっ!』


私はニヤニヤ笑いながら逃げるように走り出すと、沙都子は文句を言いながら追い掛けてきた。


『あっ!逃げましたわねー!』


思った通り。
沙都子はすばしっこく子猿のように追い掛けてきた。

全く、本当に良い意味で期待を裏切らない子だと思う。


『ふ、二人とも…!』


悟史くんが必死に止めるのも聞かずに、しばらく私達は悟史くんの周りでグルグルと追い掛けっこをしていた。

グルグル周っているのだから、逆走して捕まえたらいいのにバカ正直にグルグル周る沙都子が、面白くて仕方なかった。


『……じゃあ教えてあげましょうか?沙都子』


私は悟史くんの後ろに隠れられる位置でピタリと立ち止まった。


『ふわぁ!?』


続いて沙都子とはと言うと…ずっと走っていたもんだから、急に立ち止まる私にぶつかってしまい、素頓狂な声を上げた。


『お…教えてほしいですわ…』


沙都子はぶつかった反動で目をパチパチと瞬かせると、やっとの思いで声を絞り出した。


『…沙都子が子猿みたいだーって言ったんです』


『こ、こ、こ……!?』


『あら、この店はニワトリがいるんですか?鶏肉ならともかく、生きたニワトリを野放しにするなんて…』


『〜〜っ……違うもん!それに子猿だなんて…失礼ですわぁー!』


『だから教えたくなかったんですよーだ』


私はニヤニヤと不適な笑みを浮かべて軽く受け流してやった。

…無論、これだけで沙都子が黙っているはずもないが。


『むきぃーっ!詩音さんは私に対して酷すぎますわぁー!』


むきーっ、という怒り方からして…やっぱり沙都子は子猿だ。

子猿なんてまだ可愛い方だから良いじゃない。
マシな例え方をした私に感謝してほしいぐらいですよ。






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