小説

□無題
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「………ううん」
付けっ放しにしていたスタンドの明かりで目が覚めた。
シーツに包まれながら、時計を見る。最後に意識があった時から4時間ばかり経過していた。
部屋を見渡しても、隣にいるはずの恋人は、影も形もなくて。
手を伸ばしても、触れるのは枕の感触だけだった。
柔らかくて、冷たい。
…まだ帰ってきてないのか。
変に期待したせいで、寂しさがより一層強くなっていく。
しかも、どうにも目が冴えてしまって眠れそうにない。
絶対明日は寝不足だ。
「…この責任はとってもらうからな」
勿論、主に、スキンシップで。
さてどうしようかと考えているうちに、ふと喉の渇きに気付く。
「…何か飲むか」
まだどこかぼーっとしている頭でドアを開けると、何だか少し明るい。
あれと思うよりも先に左手―リビングの方向―に目をやる。
さっきまで暗かったドアの向こうから、光が洩れていた。
「!」
走りたかったが真夜中なので、心なし、速歩き。
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