小説

□言葉にできない
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「近頃、執事喫茶ってのが流行ってるんだって」
ぱきり。
ポッキーが折れる音。
「なんでも、乙女の傷ついた心や疲れはてた心を癒すために男装した女性がお出迎えして、接客してくれるらしいぞ」
ふぁさり。
ソファに手が沈む音。
「こういうお店があるのは、いいことかもしれないな。一人でいたって平気な人でも、やっぱり、人恋しくなるときがあるだろうし」ぱたぱた、
ことり。
君の分のコーヒーをテーブルに置いた音。
「ユダが大学祭で計画してるらしくて、スタッフか客としてこないかと誘われたんだが、断ったんだ。私は接客には向いていないし、ましてや客になるつもりもないしな」
ふわり。
君が微笑む気配。
「だって給仕したり、されたりして一番嬉しい相手は、いつもそばにいてくれるし」

…………………………。

「…そうか」

うれしさが溢れてしまって、言葉が出てこないから、その代わりに今日も君を抱きしめる。

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