小説

□無題
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同じ方向に進んでいる二人の少年。
しかし二人は知り合いでも何でも無い。ただ同じ方向に向かって歩いているだけ。
一人はこの辺りの学生服に身を包み、大きめな紙袋を携え、黒い髪を一つに結わえている。
対して、白い長髪を束ねた少年は、まだ学生服を着るような年頃だが、私服のせいで、やや大人びて見える。
二人は同じマンション、同じエレベーターに乗った。同じ階でおりると解っても互いに「ここの住人か、もしくは自分と同じようにここの住人に会いに来たのか」程も思ってなかったかもしれない。
互いをはっきりと認識しなければならなくなったのは、同じドアの前で同時に止まったときだった。
だからと言って、口を聞くでも無く、互いにちらっと見合い、インターフォンに近い方が代表するように呼び鈴を鳴らした。
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