小説

□今夜は眠れない
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途端後ろからルカが抱きついてきた。
「うりゃっ」
「え?…っと!」
…訂正。
引きずり倒された。
「つかまえた」
してやったりと満足気な顔で笑うルカ。
お互い息がかかるほどの距離しかない。
文字どおりの、至近距離。
「つかまえられた」
腕を伸ばして、ルカの後ろ頭をそっと抱き寄せるようにする。
軽く、唇が触れ合った。
「カムイ…」
ルカが呟いて、首元に顔を埋めるようにする。
俺はぎゅ、とその体を抱き締めて言った。
「おかえりのキスがまだだったろう?」
「忘れてるかと思った」
「お前との約束だから忘れない」
うれしそうに笑うルカは、いつの間にか、俺の腕を枕にして横になっている。
体が密着する。
その髪を撫でた。
ちょうど耳の辺りに当たる頭。
とくんとくんと脈打つ鼓動。
微かな呼吸音。
腕にくる慣れた重さ。
すべてが愛しくて、大切に思えて。
ただ、満たされていく。
「詩的な事言っていいか?」
「ああ」
「こういう時間を、永遠って言うんだって思った」
「俺もだ」
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