小説

□花火大会の夜
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「あー…今日花火なんてやっているんですね…」
パンドラはテレビのチャンネルを回し、たまたま映ったローカル局で放送していた地元の花火大会を観ながら呟いた――隣に座っている、恋人にむかって。
「行くか?」
「嫌ですよ。あんなところ、混んでるばっかりで」
「じゃあ怪談百物語観るか…」
「嫌です!どうしてあなたはいつも私の嫌がるものばかり…!」
「そりゃあ…」
キラはパンドラを抱き寄せて、耳元で囁く。
「おまえの嫌がる顔が可愛いくて仕方がないからに決まっているだろう?」
「…あまり嬉しくない愛され方です」
「そうか?俺がこんなことをするのはおまえだけだが…」
「それ、あなたの愛情表現の最上級?」
「まあな」
「『特別扱い』は嫌いじゃありませんよ…」
キラがほんの少し照れたように見えたから、パンドラは素直に嬉しくて、応えるように彼の体に腕を回した。
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