小説

□花火大会の夜
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「花火…半分しか見えない…」
ルカは自宅のベランダの手摺りに寄り掛かりながら不満そうに呟いた。
「今年から打ち上げる場所が変わったからな…仕方ないだろ」
ルカの頭にぽんっと手を乗せ、カムイは言う。
毎年、この場所で二人で見ていた花火だったから、打ち上げ場所の変更はルカにとって大変おもしろくないニュースだった。
「あっ、今上がったのハート型だった」
しかしせっかくの変わり種も半分。
「きちんとした形で見たかった…」
「…これじゃあ駄目か?」
次の花火が上がった瞬間、カムイはルカの目の前にハートのかけている部分と同じ形に曲げた手を出した。
「ハート、見れた」
嬉しそうに笑ったルカは、カムイの肩にもたれかかり、ありがとうと囁いた。
「来年はきちんと見れる所まで行くか?」
「いや…ここが良い」
ここでおまえと二人で見るのが好きなんだ、カムイの目を見ながら、ルカはそう続けた。
カムイも嬉しげに目を細めると、ルカの頭の後ろに手を回し、ゆっくりと自分の方に引き寄せ、唇を重ねた。

END
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