SILVER SOUL

□七夕
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七夕、五節句の一。
七月七日の夜、牽牛星と織女星が年に一度遭うという。



「で、それが何だ」
俺の話を聞いた桂は、解せないというように眉を顰めた。
「もう直ぐじゃねぇか、七月七日」
俺の言葉に桂は頷く。
「似てねぇか?」
「誰が誰に?」
主語を抜かすな、主語を、と桂は言う。
こいつは昔から俺に対してはやけに説教じみて喋る。
「俺とお前が、牽牛と織女に」
「何処がだ」
「滅多に会えねぇとことか――あァ先ずは恋人って所からだな」
俺がそう言って笑うと桂は溜息を吐いた。
「突然何を言い出すかと思えば……くだらん」
「くだらなかねぇだろ」
恋人達が会えねぇのは死活問題だろうが。
そう言うと、桂はくるりと俺の方へ向き直った。
「だから今会ってるじゃないか。年に一度切りという訳でもあるまいし、雨で会えなくなる事も無い」
「まァそりゃそうだが」
ちったぁ雰囲気って物を作り出そうという考えは無いのかねぇ、この男は。
俺の不満げな顔を見ても、何食わぬ顔をしている。
「しかし――」
桂ははたと気付いたように言った。
「雨は降らなければ良いな」
「七夕の日にか?」
「ああ。彦星殿と織姫殿が会えなければ寂しいだろう?」
彦星殿と織姫殿って。
多少呆れながらあぁと頷く。
「それに、雨だったら足袋が濡れてしまって気持ち悪いからな」
「何、七夕は外出すんのか?」
「何言ってるんだ、お前に会いに行くんじゃないか」
ぴくりとも表情を変えずに桂はそう言った。
どくりと脈が波打ち、俺は片目を大きく開いて、ゆっくり閉じた。
「そうだな……降らねェと良い」
「あぁ」
――どうやら俺の織女はかなり積極的らしい。












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