SILVER SOUL

□贈り物
1ページ/2ページ

「……何をしているんだ、銀時」
「あ?」
目の前の信じられない光景に、桂は思わず重低音で話し掛けた。
今日は銀時の誕生日。
桂は万屋に出向いて蕎麦を作って食べさせようとしたのだが――。
一分前桂が銀時に出した蕎麦の上には、大量の餡子。
「何って――餡子」
「そんな事は見れば分かる。俺が精魂込めて作った蕎麦に、何て気色の悪い事を」
「気色悪いィ?」
桂の言葉にびくりと銀時が反応する。
「何それ?聞き捨てなんねぇな」
「気持ち悪いじゃないか。蕎麦と餡子が合う訳無いだろう」
「合わないとか試した事有るんですかァ?」
「それは無いが……、」
ぐ、と言葉に詰まった桂は拳を握り締め踵を返して部屋から出て行った。
ふん、と銀時は鼻を鳴らす。
「おいおい、台所片付けて帰れよ」
そう文句を言いつつ台所に入った銀時は口を噤んだ。
台所は案外きちんと整理されていた。
寧ろ始めより綺麗になっていた。
銀時は端に置いてあった蕎麦粉の袋を手に取る。
後から台所に入って来た新八が、
「あっ、それすっごい高級な蕎麦粉じゃないですか」
と言った。
「高い蕎麦粉ねぇ」
「わざわざ粉から作ってくれたんですか、桂さん――って銀さんどこ行くんですか?」
「ちょっと出てくるわ」
そう言って銀時は万屋の扉を引いた。



桂は苛々として通りを歩いていた。
気持ちが高ぶっていて変装無しの無防備な姿だった。
「……くそっ……」
指の爪をかりっと噛む。
すると視線の端に見慣れた制服が目に入った。
それが真選組の物だと分かった瞬間、桂は勢い良く路地裏に引っ張られる。
「なっ……!」
開いた口を男の手が塞いだ。
「静かにしろ、捕まりてぇのか?」
そう言葉があってから手が緩められる。
「銀時、貴様……」
きっ、と桂が睨んだ。
「分かり難いんだよ、おめぇは」
「分かり難いだと?」
「だからァ、気の配り方が」
「貴様の言いたい事が分からん」
頑なな桂に銀時は溜め息を吐く。
「高い蕎麦粉から態々手作りでさぁ……そんなん、ぱっと見で分かんねぇっつの」
「……で?」
「……悪かったよ」
がしがしと頭を掻いて謝る銀時に桂はうむ、と頷いた。
「許してやる」
「何だよ、偉そうに」
桂の言葉に銀時は不機嫌そうに溢す。
そんな銀時に、桂は唇を重ねた。
突然の桂の行為に銀時は目を瞬し、一瞬息を止めた。
「っ何?」
「俺の一つ目の贈り物をお前が台無しにしてしまったからな。二つ目だ」
何時もは仏頂面の桂がふわりと笑う。
それに銀時は少しニヤリとした。
「じゃあ三つ目は布団の上で宜しく」
「……少し欲張り過ぎやしないか?」
甘えるように首に腕を絡める銀時に今度は桂が溜め息を吐く番だった。











次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ