SILVER SOUL

□七不思議
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何処の学校にもある七不思議。
それは大概音楽室の泣く肖像画や、段数の変わる階段といったものだ。
しかしこの学校には「生ける七不思議」が存在する。
それは桂小太郎と高杉晋助、同い年の生徒の二人。
桂は超が付く程の真面目な生徒で、どちらかと言えば融通が効かないタイプの人間だ。
一方高杉は、学校一の不良で良くない噂の方が多い。
全く噛み合わない性質の二人が何故か何時も一緒にいる事が多い、というのが七不思議となった理由だ。
今日もその二人はくだらない言い合いをしながらも一緒に居る。
「日誌なんか書いてねぇでさっさと帰ろうぜ」
机に向かい日直日誌を書いている桂の背に絡み付き、高杉は暇そうに唇を尖らせた。
「お前が邪魔をしなければ直ぐ終わる」
「良いんだよ、そんなん」
「良くない」
こんな風に高杉にそっけない態度をとれる生徒は桂位だ。
そんな桂に、高杉はチッと小さく舌打ちした。
「銀八ぁ日誌なんか読まねぇよ」
徐に煙草に火を点ける。
桂はそのライターの音に反応し、くるりと振り向いた。
「こらっ、学校で何を、」
そう言って煙草を取り上げる。
が、慌てて取り上げた為か火で火傷をしてしまった。
「熱ッ……」
思わず煙草を取り落とし、高杉はその煙草を足で踏みつけた。
「ったく、指貸してみろ」
桂の赤くなった指を手に取って口に咥える。
かぁ、と桂の顔は火傷のように赤くなった。
「何をしているんだ、貴様はっ」
「何って治してやってんだろ」
「火傷は冷やして治すものだ」
桂の言葉に、高杉はにやりと笑った。
「……そうだっけか?」
「何だ、その顔は」
悪びれもしない高杉に桂は不満げだ。
「全く……学校で煙草を吸うなど、考えられん」
説教モードの桂に、面倒臭そうに高杉は机に突っ伏す。
「銀八も吸ってんじゃねぇか、スパスパスパスパ」
「先生は大人だろ」
「気に入らねぇ、アイツ」
もごもごと話す高杉に、桂は溜息を吐いた。
高杉は桂に何かとちょっかいを出す担任が嫌いだった。
基本的に桂以外の人間は気に入らない男なのだが。
「ほら、書き終わったから帰るぞ」
桂は立ち上がり、日誌で高杉の頭を叩く。
「へェへェ」
立ち上がった高杉は前を行く桂の一歩後ろを行く。
いかにも桂が高杉を従えているようなその風景は更に他の生徒の不思議を深めるのだった。












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