BLEACH

□小さな報復
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「はぁ……」
溜息は今日で一体何度目だろうか。
その病弱な身体を気遣って、海燕は思わず尋ねた。
「どうしたんすか、一体?」
部下の問いに、浮竹は困ったように笑いながら答える。
「“双魚のお断わり!”の続きが思い付かないんだ」
「あぁ、瀞霊廷通信の……」
“双魚のお断わり!”とは、浮竹が瀞霊廷通信で連載している物語であり、それが子供に大人気なのである。
「今度の敵はどんな奴にしようかな?ってな!」
「うーん、そうですねぇ……」
考え込んで、ふと名案が浮かぶ。
「髭面のおっさんなんてどうっすか!?」
「髭面?」
ぽかんとした顔の浮竹に、海燕はえぇと頷いた。
「髭面の、やる気の無いおっさんです」
「まぁ確かに子供の敵ではあるな」
納得して浮竹は紙の端に書き留める。
が、直ぐに顔を上げ、言った。
「京楽にそっくりだな、この敵は」
海燕はその言葉にぎくりとなる。
――っつーか、その人がモデルなんで。
十三番隊の「皆の」隊長をしょっちゅう独り占めする八番隊長に小し痛い目に遭って貰おう。
そういう考えなのだ。
「気の所為じゃないっすか?」
「そうか?お前、京楽の事が嫌いなわけじゃないよな?」
心底心配している、というような顔で浮竹が言うので、海燕は思わず肩を竦めた。
――あーあ、負けたな。
「やっぱ隊長の一番は京楽隊長なんすね」
「なっ何言ってんだ!?」
突然の言葉に浮竹は驚き慌てたが、気にせず海燕は笑って言う。
「大丈夫ですよ、嫌ってるわけ無いじゃないですか」
「……そうだな、悪かった」
浮竹もにこりと笑い返し、よし書くか、と自分を鼓舞して原稿に向かった。



「ねぇ浮竹……今度の君の小説さぁ……」
後日、精霊廷通信を持って雨月堂に現われた京楽に浮竹は笑顔で対応する。
「あぁ、どうだった?敵が良い味出してるだろ」
「ははは……そうだね……」
屈託の無い表情に何とも言えず、京楽は乾いた笑いを発するしかなかった。












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