SILVER SOUL

□morning call
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独り暮らしの俺の所に、桂は毎朝俺を起こしに来る。
「晋助、迎えに来たぞ。起きてるか?」
「……」
起きてるけど、あえて返事をしない。
そしたら、桂が近寄ってくるから。
「遅刻してしまうぞ」
思惑通り、近付いてゆさゆさと俺を揺さ振る。
「……」
「……晋助?何処か悪いのか?」
返答しない俺を心配したのか、桂が顔を覗き込んできたその時を狙って、その細い身体をベッドの中に引きずり込んだ。
「なっ晋助、起きて……!?」
「一限遅れてこうぜ」
そう言って瞼に口付ける。
「駄目だ、サボりなんて。今から急げば間に合うのに、「堅ぇ事言うんじゃねぇよ」
説教を始めかけた桂の言葉を途中で遮り、目を閉じた。
隣で桂の溜め息が聞こえる。
「晋助……あんまりサボっては駄目だぞ」
そして俺の背中に細い腕が絡み付いてきて、お、結構可愛いところもあるじゃん、と感心。
横目で桂を見ると、うとうとと目をしばたたせていた。
「お前も眠いんじゃねぇか」
「今日三限目に数学の小テストがある。昨夜その勉強をしていたんだ」
「ほぉー……」
勉強なんかしなくても良い点取れるだろうに、糞真面目な奴だ。
桂の優等生ぶりに少し呆れていると、すぅ、と健やかな寝息が聞こえてきた。
「ちょっと……安心し過ぎじゃねーか?」
そう言いながら、かなり嬉しい。
眠る桂の瞼に口付けて、俺も静かに目を閉じた。



結局そのまま夕方まで寝てしまい、それから二度と桂が一緒にサボってくれる事は無かったのだった。












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