SILVER SOUL

□一矢を報いる
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非常に不本意だが、俺は高杉の事が好きだ。
それは変えようの無い事実で、どうしようもない。
兔に角、そうなのだ。



「よぉ、ヅラ」
「ヅラじゃない、桂だ」
何時もの女物の様な派手な着物、という妙なスタイルで高杉はやって来た。
一応幕府から狙われている身なんだから少しは慎んで欲しいのだが、高杉は本当によくやって来る。
「何の用だ」
「つれねぇな、お前に会いに来てやったんだろ?」
「誰も頼んでないぞ」
嬉しいくせに、つい憎まれ口を叩いてしまう。
これも癖となってしまっていた。
「可愛くねぇ奴だな」
「そう思われたくもないわ」
「……クク……」
高杉が煙草の煙を吐きながら笑う。
ただそれだけの仕草なのに、何だか格好良く思えてしまう。
――末期だろうか。
「何見てんだよ、ヅラァ?」
「何も見てな……」
ドシン、と畳に押さえ付けられる。
はだけた着物から、逞しい胸元が見えて、思わず顔が赤くなった。
勿論高杉は目敏く俺の異変に気付く。
「何赤くなってんだ?えぇ?」
「……煩い」
俺より背が低いくせに、あの逞しさは何だ。
少し、羨ましい。
「相変わらず、細ェなぁテメェはよぉ」
「な……」
人が気にしてる事を。
恥ずかしさでかぁ、と顔が火照る。
「腰とか……エロいっての」
「エッエロ……!?」
「おう」
にやりと高杉が笑う。
何て嫌な笑い方。
だけどそんな笑い方にもクラリときてしまって。
――末期だな。
「エロはお前だ、このエロ杉が」
「……減らず口を」
そう言って高杉は俺の着物の帯をするりと解いた。
「そういう事に関しては……無駄に手際がいいな」
「お誉めにあずかり光栄、だな」
「誉めて、ない」
雨の如く降ってくる口付けの合間に必死に返答する。
圧されていると思われたくない、が。
「――っあ……!?」
身体が勝手に反応してしまい。
「ククッ……」
「わ、笑うなっ……馬鹿ぁ」
何でもこいつの方が上で、でもたまにはぎゃふんと言わせたくて。
「晋、し……ん」
「何だよ?止めろってぇのは聞かねぇぜ」
「愛、してる、晋助」
俺の言葉に、高杉が一瞬固まった。
――やった。
その一瞬の隙をついてぎゅっと高杉に抱き付く。
「……驚いただろ?」
「やってくれたなァ、ヅラめ」
俺が機嫌良くそう言うと、高杉はチッと舌打ちした。
「――今日は手加減しねぇぞ」
耳元でそう囁かれ、返事の代わりに俺はすっと目を閉じた。












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