戴き物

□コウ様から
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暗い夜道を歩く人影があった。
星空に浮かぶ満月
人々を癒す美しい月
太陽とまったく正反対の月

人影は二つ
一人は江東の小覇王・孫策
そしてもう一人は江東水軍提督・周喩
二人は片手に酒瓶を持ち、歩いている。
戦で見せる険しい表情はなくとても穏やかな表情を二人はしている。

「久しぶりだな、お前と酒を飲むのは」

「そうだな、私こそお前と酒を飲むのは久しぶりだ…」

周喩はフフッと笑う。
孫策もつられて笑みをこぼす。
二人が歩く。
目当ての場所に向かって歩く。
そこは綺麗な桜が咲く丘
見晴らしのいい丘
そこが二人が酒を飲み交わす場所であった。

歩き続け、その場所へとつく。

「やはり、ここはいい場所だな」

「そうだな、ここでお前と飲み交わしたな…」

孫策と周喩は懐かしそうに言う。
月日がたち、しかし、桜は綺麗に咲き誇っている。
あのときのまま変わっていない。
変わったのは孫策と周喩だった。
孫策は今は亡き孫堅の後を継ぎ、江東を支えている。
周喩は師である魯ショクの後継者として正軍師になり江東の水軍提督になっている。
本当に変わってしまった。

江東もこの広い世界中も…

「…なぁ、周喩」

「?どうした孫策?」

「…いや、やはりいい…」

「?」

孫策は桜の木の下で 杯に酒をつぎ、飲んでいる。
周喩は孫策が言おうとした言葉が気になったが深くは聞こうとしなかった。
風に吹かれて桜の花びらが散る。
ヒラリ、またヒラリと散っていく…。
まるで人の命のように …はかなく散っていく…。

「周喩」

「なんだ?」

「…お前は俺と共に――――……」



あぁ、お前の言葉…聞こえなかった。
あの時何を言ったのか…
気になってしょうがない…
もう、いないお前に私はどんな顔をして会えばいい?
涙が止まらないのだ…
涙が…
会いたい
あぁ…声を聞きたい……


                 『この世界を見てくれないか?』


孫策、お前の声が近くに聞こえたのは気のせいではないよな?
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