とうらぶ 短編
□まるで、それは
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眠い。
二日前においそぎで、と渡された書類の山を目の前にして途方にくれていた。
目を通すだけのものもあれば回答が必要なものまで。
「…おいそぎっていつまで?」
と尋ねたら二日後…つまり明日までという。
おいおい、日常のお仕事に加えてさらにこれも追加ですか。
ああ、やらなきゃなぁと思いながらも一日目は放置してしまった。
二日目。
いよいよ、「一生懸命やらないと首が落ちるよ」な状況に陥ってしまった。
ゆっくり食事なんてする暇ない。
自室で一人で食事をしていた。
「…夜くらいはみんなと食べれるようがんばろ…」
と、ひとりごちた。
今日の近侍は、誰だったっけ、
今そばにいないと言うときは出陣している。
ああ、そうだ。太郎さんだ。
今日もあの美しい人はたくさんの敵を薙ぎ払ってくるんだろう。
太郎さんは、言葉数が少ない。
ここの本丸に来てから、必要以上に会話がない。
美しい顔で、眉一つ動かさずに話す。
先に来ていた次郎さんに兄貴のことよろしくねえと言われたけど、どう接すればいいのか迷ってしまう。
「…あ、太郎さん…」
「主」
やってしまった。
居眠りどころかがっつり横になってたようで、目を開けるとそこには美しい顔の太郎さんがわたしを覗いていた。
太郎さんの長く細い髪がわたしにかかる。
「お疲れですね、主」
「太郎さんこそ…」
お怪我はありませんか、と太郎さんを見上げると、
「御自身で確かめてみては?」
とわたしの手を持ち、太郎さんの頬に触れた。
「…ないようです、すべすべですねお肌」
「…?…ええ、怪我はありません」