にゃんにゃん雄
□女子高生、猫が好き
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「…お?……猫?猫だ」
黒いミュージックポッド(エムポと略す)から私の耳に繋がる赤いヘッドフォンからは、私の大好きな声優さんの出演しているBLドラマCDが流れている。
そしてそれを音漏れしない程度に大音量で聴きながら家への帰路を歩いていた時の話。
黒猫を不吉の象徴だなんて言った奴の気がしれないね、こんなに可愛いのに。
「あや、キミ、人懐っこいんだねぇ。可愛いなあ」
にゃーにゃー鳴きながら私の方に歩いて来たかと思えば、しゃがんでブーツの甲に乗せていた手に頭をすり寄せて来た。
小さい。
可愛い。
撫でろってことかな、撫でていいの?
にゃー、と一鳴き。
「了承?頭いいね、君。」
する、と、頭から尻尾の付け根までを撫でる。
尻尾の付け根なんて敏感なところ、普通なら嫌がるのに、変な子。
気持ち良さげに目を細め、私と目を、あわ、せ、る。
「…き、れー」
右が紫、左が赤のオッドアイ。
珍しいなんてものじゃないだろう。
毛は野良にしてはツヤツヤでふわふわ。
真っ黒な毛並みのいい猫が、しかもオッドアイときたら、猫好きとしては飼い猫じゃないかとおもうだろう。
「首輪は、なし、か」
撫でる手を休めた私に痺れを切らしたのか、もっと撫でろ、とばかりにぐりぐりと擦り付けてきた。
「あ、ごめん」
よしよしと撫でていると、知らぬ間に空は赤らんでいる。
「…そろそろ、帰らなきゃなあ」
ーーーー何処にだ?ーーーー
「そりゃ、家だよ」
あれ?
「今の、キミ?…んなわけないか。夢見すぎだな」
ーーーーお前が帰る場所はそこじゃない。…漸く、準備が出来た。
帰っておいで。ーーーー
「は、え?喋ってる?てかカエルって何処にさ。すぐそこなんだけど。家、え、ェえええぇ…」
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