Nobel

□三七日
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隠すことすら知らない独占欲が露になって宙に吐き出される。何十何百何千…はないか。しかし数えきれないくらいの絶頂をこの男と迎えてきたが何度繋がっても何度射精してもこの気持ちだけはどうも消えない。セックスするたび阿伏兎の背中には十の爪痕がくっきりと浮かび上がりそのまま横に、縦に、斜めに線上になっている。無意識の愛情表現かただ夢中になる故のものか、恐らく答えは後者だがそんなことすらどうでもいいくらいにただただ愛しい。愛しくて仕方がない。一生この腕の中から出たくない。離してほしくない。そう思う反面一生離したくないし一生誰にも渡したくないと思っているのは俺であり阿伏兎ではないということを忘れる。まさに片想いの極みだ。いや、これは恋と呼ぶにはあまりにも過激すぎやしないか。殺してしまいたい程愛狂おしくて殺して欲しい程夢中なのだ。依存なんてもんじゃない。狂愛なんて生ぬるいもんじゃない。そう、言語で表すには重すぎて、行為で表すには軽すぎる、そんな曖昧なものだ。理性なんてはなからない。それでも吐き出される独占欲は飲み下されようがシーツに吸い込まれようがティッシュにくるまれようが何れ辿り着く運命は同じ、消去だ。必要のないものは捨て去られ大事に大事に受け入れて飲んだとしても結局は消化され食べたものと一色単になる。なんて無情な世の中。しかしそうできているのだから仕方ない。人のからだの原理と同じくして異質とも言える記憶や言語とは違うのだ。思い返し話すこともできなければあの日(いつか)のセックスがもう一度したいと願っても叶わない。だから形ないものは嫌いだ。手の中に納めておくことができないのだから。そして俺が永遠の阿伏兎を手に入れてもうすぐ二十一日。もう一度言う。手に入れることのできないものには興味がない。俺の意に反するものはひとつたりとも許さない。俺が永遠の阿伏兎を手に入れて、もうすぐ二十一日。そろそろ俺も阿伏兎のところにいこうかな。もうすぐ、二十一日。

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