Nobel

□依存
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俺も神威も、セックスすることに対して否定の意思も同意の意思もましてや恋や愛や遠慮や躊躇の意思もなにもない。毎晩ふと気づくとどちらかともなく部屋に集合しお互いのちんこをしゃぶり合い慣らし俺の昂りを神威が受け入れる。そんな行為を繰り返して早半月。所謂セフレと呼ばれるこの関係を打開しようと動き出したのは、驚くことに神威の方だった。阿伏兎、そろそろはっきりさせようよ。そういうと神威は早々に服を脱ぎ捨て俺に股がった。こんなときでさえやっぱりセックスですか。正直なところ後腐れないこの関係を気に入っていた俺は愛とか恋とかそう言った類いの感情を神威に感じたことはなかった。だからといってヤれればそれでいいとか団長はただの性感情を納めるものだとか思ったことはない。心のどこかではそう感じていたのかもしれないが、俺自身がそう思ったことは一度もなかった。
「阿伏兎は、俺のことが、…っ、好きなの?」
俺から与えられる甘美な快感を下の口で受け入れながら神威は聞いてくる。答えがすぐ出ず戸惑った俺はさらに深く強く腰を打つことで神威の意識をそらそうとしたが、今日の目的はそもそもこれじゃあないらしい。これは言わばお子さまランチについてくる旗やおまけのおもちゃなのだ。ランチが主だった物にも関わらず、子供はおもちゃに夢中だ。それでもランチを食べることは忘れない。なんて贅沢な餓鬼だ。
「後少し、なんだから、黙ってろっ」
「ふ、あぁっ、んんんっ、なんか今日、変、ダメ、あ、あぁっ、阿伏兎、んあぁっ!」
がくがく、と痙攣した後、神威は膝から崩れ落ちた。それを支えようともせず、肩で息をしている団長の背中を強く蹴りあげた。まさか蹴られるなんて想像もしていなかったのだろう。目は見開き、紅潮した肌は一気にもとの透き通る白に戻っていく。お互い様だ、俺だってこんなことするとは思っていなかった。目の前で動揺の色を隠せないでいる神威より、俺の方が情けない顔をしているんじゃないのかな。
「どう、…したの?」
「うるせぇ、これで終いだ」
振り返りもせず衣服に袖を通す。何も身に纏っていない団長に背を向けその部屋を出ると、思いっきりドアを閉めた。これが、答えだ。もう二度と神威とセックスをすることはない。

「ちっ…体の相性だけはいいと思ってたのによ。残念だ」

“好きなの?”なんて言葉で片付けられるくらいならば、終わりにした方が何倍もましだ。神威から離れられなかったのは、セックスをやめられなかったのは、俺の方だ。そしてこれは愛や恋なんていう生ぬるいもんじゃあ決してない。

「依存だよ、こりゃあ…」

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