Nobel

□心理的ケロイドの行方
1ページ/1ページ



※3Z設定




『恋は火傷』なんて言葉を良く見かける。自分の下で下品に喘ぐ金髪の女にさらに腰を打ち付けながら、目を瞑る。女の中はとても熱くてトロトロと俺のモノに絡みつく。絶え間無く続く『イク!』だの『好き』だの言う言葉を自分の中から0.01の単位までシャットアウトして俺はひたすらただ一人のことを考える。


ソイツは男だ。が、その辺にいる女やまして俺の下で喘いでいるこの女(仲間ではある)なんかよりも遥かに美しい。透き通る肌の色や平均よりも細くついた筋肉、どこか甘さを含む声は今まで出会ってきたどの女よりも洗礼されていて、綺麗だった。どんなに手を汚しても、犯しても、犯されても、相手に依存することはない。誰にも染まらない。だからあの男は、ずっと汚れないまま、美しく見えた。


ソイツを目にしてから、俺の生活の殆どはその男で成り立っていた。学校に行くにしろ、家から出るにしろ、すべての意味はその男でしかない。学校に行けば憎らしい笑顔で『やぁ、高杉』なんて言いながら俺を手にかけようとする。ああ、綺麗だ。真っ直ぐに伸びてくる手も、均一に編まれた髪も、長く伸びた睫毛も、殺意たっぷりの瞳も。戦うことしか頭にないコイツは、俺のことしか見えていないはずなのにその目に俺が映ることはなくて、右の頬を掠めるその拳を掌で受け止め口元に持ってくると、ソイツは気味悪そうな残虐な笑顔でいつもこういうのだ。
『気持ち悪い』


恋は火傷?そんな小汚い訳がない。強いていうのなら、ケロイドだ。醜く残った火傷の跡。一生消えることのない傷跡。じゅくじゅくと病んで膿んだあとには変色しそこから消えることは絶対にない。その男の潔い後ろ姿を見つめながら、触れた掌でシャツの襟を掴む。


『……あちぃ』

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ