企画
□知恵の輪
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なぜだろう…。
『あ!?私がミラさんに貰ったクッキー!! 何勝手に食べてんのグレイ!!』
「まあまあ怒んなよ。老けるぞ?」
最近、グレイ様を遠くに感じる。
『黙れ!!』
「グハッ」
なぜだろう…
「ニッシシ、怒られてやんの!」
『ナツ!あんたもか!!』
「ウパーッ!」
手を伸ばせば触れられる。どんなに近くにいてもグレイ様が遠い。
『…』
なんで…
『グレイ様…』
「ん?どうしたジュビア。」
あなたは何も変わっていないのに
『いいえっ
ジュビアちょっと用事思い出したので帰ります!!』
「あ、おいジュビア!」
あなたが遠くて切ない…
『…っ』
苦しい……っ
******
とぼとぼと普段通りの家路を歩く。
『……』
ただ、異様に足が重たい。
『!』
その時背後から誰かが駆けてくる足音が…
『(まさかグレイ様!?)』
嬉々と振り返るとそこには――
『ジュビアーーっ!!』
『(ゲッ)』
恋敵、ルーシィの姿が…
『もっ、もう…っ、ジュビア歩くの…早…』
はぁはぁ、と荒い呼吸をしているルーシィ。
まさかジュビアを追いかけて……?
『……』
ジュビアの中で黒いものが渦巻いた。
『ジュビアは…』
『はぁ、はぁ……っ、ん?』
『ジュビアはグレイ様に来てほしかった。』
じわり、と目尻を涙が濡らす。
『最初はね。グレイがジュビアを追いかけようとしてたんだよ。』
なら…っ、なんで…っ
『あたしが止めたの。』
『!!』
キッ、とルーシィを睨んだ。
『なんで!!』
あなたはジュビアの気持ちを――!
『好きだからだよ。』
『!』
さっきまで荒い息をしていたルーシィが凛とした声で言った。
『ルーシィが…、グレイ様を…』
頭を鈍器で殴られたみたいに頭が痛い。
『あ、なたは…、ずっと否定…して…』
涙が次から次へ流れてく。
『……っ』
ジュビアは口を覆った。
『ごめん。』
ルーシィがグレイ様を好きなことがショックだ。でも、それはどこかでわかってた。
『あたし自分にもジュビアにも…嘘ついた。』
一番ショックなのは…っ
『だからあたしは言わなきゃいけないの。』
ルーシィに嘘をつかれたっていう事実。
『あたしはグレイが好き。』
口ではいつも憎まれ口を叩いていたけれど…、友達だと思っていた。
『…っ』
悔しい…っ
『…グレイが例え他の誰かを想っててもあたしは…』
悔しい…っ
『グレイが好き。』
『…っ』
『それが伝えたかったの!』
『じゃーね』と告げ走り去るルーシィの背中がたくましく見えた。
『…あなた…っ、バカですか…っ?』
悔しい…っ
『グレイ様が他の…、あなた以外誰を好きになるっていうんですか…っ』
痛い、
『グレイ様もルーシィも…っ、ジュビアも…』
胸が痛くて仕方ない…
『バカだ…っ』
皆、皆…
『グレイ様…っ』
報われない恋に泣きました。
知恵の輪
(グレイ…)
(ルーシィ…)
(彼らの想いを知るのはジュビアだけ)
(だから皆、皆報われない。)
(だーから!人のものを勝手に摘ままない!)
(まあまあ)
(ジュビアはどうしたらいいですか…っ?)
(誰か…教えて――)
・終わり・