企画

□満天の夜空に
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わいわい、ガヤガヤ、お祭り騒ぎのような空間に彼らはいた。

「おー、見ろよ日向!この面!!」
「ダァホ。ガキか、お前は。」
「…火神くん。食べ過ぎです。」
「お前が食わなすぎなんだよ!」
「……」
「え?水戸部“今からこんなに食べてちゃ火神が心配”? だってさ、火神!」
「…先輩なんでわかるんですか…」

見事WCを制した誠凛バスケ部一行が集まり何をしているのか。それは実に簡単なことだ。

「それにしてもカントク遅いな…」

彼らは初詣をしに神社に来ていた。しかし、部活の紅一点の相田リコの姿が見えないことから彼女を待っていることが容易に推測できる。

「日向ー!わたあめ買ってきた!」
「ハッ…!! わたあめがあ――」
「知らねーよ!つか黙れ!!」

とはいえ、この比較的高身長の集まりが騒いでいたら人々の注目を浴びるわけで…

「あれ?」
「あ。」
「あー。」
「……」

黄、緑、紫、赤、青、桃といったそれはそれは色とりどりの色彩を持った集団の注目も当然のように浴びていた。

『テツくーん!!』
「!」

一番最初に動いたのは桃色の色彩を持った桃井だった。

「やーっぱり!誠凛も来てたんッスねーっ」
「桃井さんに黄瀬くん…?」
「よー、テツ。」
「青峰くんも。」
「あ、あっちにわたあめが――」
「勝手にどっかに行くんじゃないのだよ、紫原!!」
「紫原くんに緑間くんも…」

黒子を含めた誠凛バスケ部は“てことは…”と嫌な予感をたぎらせながらある方向に顔を向けた。

「WC以来だな。」
「(やっぱりいたあああああああ!!!!)」

そう、彼らキセキの世代が集まっている場所にキセキの世代の主将、赤司征十郎がいないわけがないのだ。

「あららー、やっぱり赤ちん怯えられてるんだー」
「フッ、僕に平伏すのは当然だ。」
「別に平伏してはないと思うッス」
「涼太。何か文句でもあるのか。」
「ないッス!!」

誠凛バスケ部に加えてキセキの世代まで加わるとなると周りからの好奇の目は半端ない。

『テツくんったら私の誘い断ったと思ったら誠凛バスケ部で来てたんだね!!』
「はい。でも、まさか同じ祭りだとは思いませんでした。」
「つーか、緑間と青峰はまぁ普通だけど、紫原と赤司はなんでいんだよ?」
「なんだよ。火神。文句でもあるわけ?」
 
火神の警戒心たっぷりの目が気に入らないのか、はたまた最初から火神が気に入らないのか紫原からいつもの子どもらしいのんびりとした雰囲気が消えていた。

「まあまあ二人共!!せっかく会ったんだ、仲良くしようぜ!!」

木吉が二人の肩に腕を回すと三人仲良く腕を組むようななんとも奇妙な絵柄に…

「つーか、リコの姿がねーんだけど。」

青峰の言葉に誠凛はギクリ、とした。

「か、カントクは…!」
「あ、えっと…っ水戸部!!」
「……っ」
「あー、リコは今日他に用事があって来ないんだ。」

爽やかな笑みを浮かべながら嘘を述べた木吉に誠凛は親指を突きだし「よくやった!! 」と木吉を讃えたくなった。
しかし、

「嘘だな。」

天帝の眼を持つ赤司が彼らの動きを見逃すはずがなかった。

「は!?平気な顔で嘘つくとか誠凛汚な!!」
「黙れモデル(笑)!!
お前ェらにカントクが来るなんて言ったら“じゃあ、オレたちも”とかなるだろ!!」
「あ、おい日向!!」

黄瀬の言葉に日向のクラッチタイムが発動し、あろうことか大変なカミングアウトをしてしまった。

「フンッ、自分から相田さんが来ることを言うなんて愚かなのだよ。」
「相ちんか〜。久しぶりに会いたかったんだよね〜。」

緑間と木吉の腕から抜け出した紫原が言った。

「おい!日向何カミングアウトしてんだよ!!」
「す、すいませんでした…っ」

誠凛バスケ部に睨まれた日向は一人だけバツの悪そうな顔をしている。

『ねぇねぇ、リコさん浴衣かな?浴衣かな!!』
「リコっちの浴衣姿かぁー……、いいッスねー!」
『だよね!!』

わいわいと桃井は一人リコの浴衣姿について語りだし、その桃井の語りからリコの浴衣姿を想像したのか黄瀬は締まりのない表情をしている。

「浴衣着たって変わんねーだろ。胸ねーんだし。」
「大輝。浴衣というのは胸が乏しいほど似合うものだ。」
「……マジ?」
「あぁ。」

青峰と赤司にいたってはここにリコがいれば血祭りに上げられていてもおかしくない会話をしていた。

「(マジでカントクまだ来るなー…っ)」

誠凛バスケ部が一丸となって願った願いむなしく、一つの声により灰と化した。
 
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