企画

□犬のしつけ方
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「はっぬゎっせぇーっ!!!!」

火神の余裕のない声が体育館に響く。

「先輩離してくれー!!!」
「落ち着け火神ー!!」

巨体の火神を二年生が数人がかりで押さえている。

「火神くん落ち着いてください。」

いつからいたのか黒子が(お〜●)お茶を啜っていた。

「ちょっ!黒子!!お前いつからいたの!?」「てか手伝えよ!!」

火神を押さえながら伊月と日向が半ば叫ぶように黒子に向けて言った。しかし、

「嫌です。僕が死んでしまいます。」

黒子はそれを一刀両断。

「ふんっぬ゛うぅぅうう!!!」
「というか火神くんは何をそんなに必死になっているんですか?」
「それがなー黒子。」

黒子の隣にはいつの間にか火神を押さえていたはずの木吉の姿が…。

「えっ、ちょっ、木吉!!?」

木吉がいなくなったことにより火神の勢いが増す。

「いやー、日向。ちょっと疲れたから休むな!!」
「言ってる場合か!ダァホ!!」
「はーなーせぇぇえ゙っ!!!!」
「うわあぁぁぁああ!!!」
「…」

黒子は火神を押さえ込んでいる二年生たちを哀れむような目で見つめた。

「―――ってことがあったんだよ。」
「なるほど。」
 
木吉の話を要約するとカントクことリコがどうやら三年の先輩に呼び出されたそうだ。それを聞いた瞬間火神が暴れだした、というわけらしい。

「本当、火神くんのカントク好きには敵いませんね。」

言葉の割りに呆れたような目で火神を見る黒子。

「そうだなー」

それとは対照的に爽やかに笑ってみせる木吉。

「カーンート−ク−!!!」

しかし忘れないでもらいたい。

「だから落ち着け火神ーーっ!!!!」

火神と木吉含めない二年生の戦いはまだ続いているということを…

「ぐぬぅーっ!!」
「ふんっぬーっ!!!!」

しかし戦いというのはいつかは終わるもの。

『皆ごっめーん!!』
「カントク!!」

突然のリコの登場に“神の救い!!”と言わんばかりに二年生たちの強面だった表情が少々緩んだ。

『…?』

二年生たちは必死で火神を押さえていただけなのだがリコはそれを知らない。当然遊んでいるように思ったようで…

『何、してるの?』

『み・ん・な』と笑顔のリコにビクッ、と二年生たちは恐怖に体を震わせた。

「カントク!!」

これ幸いと力が緩んだのをいいことに火神は二年生のバリケードから脱出し見事リコをその胸の中に閉じ込めた。

「『…』」
「カントク…ッ」

場が騒然となる中、火神の“カントク”と連呼する声が体育館を包む。

「カントクカントク!」

あえて言い表すならば大型犬が飼い主との再会を喜んでいるかの様な状態。

「カントク心配したぞ、です。」

一番最初に我に帰ったのはリコだった。

『ちょっ、火神くん!君なにを勘違いしてんだか知らないけど私は会長に呼ばれてただけよ!?』

頬を赤く染めながら火神を睨み付けるリコ。

「えっ、だってカントクが三年の野郎に拐われたって聞いたから心配して…!!」

火神の言葉にリコは部員たちの方に顔を向けると小金井の肩が明らかに過敏に反応を示した。

『発端はあんたか!!』

リコは火神の腕から脱け出すと小金井の胸ぐらを容赦なく掴んだ。

「いやいやいや!そこまで言ってないよ!? 」
『問答ッ無用!!』

リコは小金井にヘッドロッグを食らわせると続けて逆エビの刑に処した。

「…」
『さて。』

ぐて…、と魂の脱けた小金井を尻目にリコはにこりと笑ってゆっくりと右手を左の肩まで上げると一気に右に引いた。

『皆外周50周の後、筋トレはいつもの3倍。火神くんは4倍ね?』
「うすっ!!」「えっ!?」
 
元気に返事をして走り去る火神とは対照的に二年生及び黒子は目を丸くする、が…

『グズグズ言ってないでやれ!!』
「はい!!!」

リコの怒りの前ではなんの意味も為さなかったそうだ。


犬のしつけ方


(カントクがまた先輩といたよー)
(なっ、バカ、コガ…!)
(カントクーー!!)
(バカ!コガ死ね!!)
(えーっ!!?)


・終わり・
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