企画

□君だけ
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今日は皆に誘われたこともあり私は遊園地に来ていた。

「いや〜、遊園地なんて久々だなーっ」
『なーに、にやにやして気持ち悪い。』
「えー?」

繋いでいる手を振りながら、だらしなく笑う鉄平に私は苦笑気味に言った。

「そーだそーだ、気持ち悪ィー」
「なんだよ日向までー」
「けっ」

いつもの如く言い合いをする二人に思わず溜め息が出た。

『(てか私を挟んで喧嘩するんじゃないわよ…っ)』
「あ、カントクカントク。」

そんな時、パンフレット片手に後ろを歩いていた伊月君が私を呼んだ。

「あっ、リコ!」
「ざまぁ」

もちろん救いとばかりに私は鉄平から離れると後ろに下がり伊月君の隣に並ぶ。

『どうかした?』
「うん。あのさ、今火神たちと話してたんだけどこれとこっち、カントクはどっち行きたい?」
『私が決めていいの?』

首を傾げて言えば伊月との間からパンフレットを覗き込むように火神がやって来た。

「カントク!絶対こっちの方が楽しいぞ、です! !」

火神君が指差すのはこの遊園地で一番凄いと言われるジェットコースター。

『(まぁ、火神君だし予想はしてたけどいきなりそこ行く?)』
「カントク。」
『ぎゃ!』
 
ぬっ、と突然現れた黒子君に肩が震えた。

「僕はこれが良かったんですけど、伊月先輩と火神君に拒否されました。」
『んー、どれどれ…』

黒子君が指差すのは…うん。意外っちゃ意外。コーヒーカップだった。

「(そんなん乗ったら木吉(先輩)がカントクとイ チャイチャしちゃうじゃん!!)」
『(ま、火神よりはマシ………か?)』

黒子君の意見にも首を傾げつつ伊月君の言っていたもう一つの候補を見る。

『…………………あのね、私の見間違いじゃなければヤツが候補に入っているんだけど…』
「あー、そういえばカントク苦手だったね。」

伊月君の方に顔を向けると眩しいくらいの笑顔。

「お化け屋敷!」
『(確信犯かお前はあああああ!!!)』

よし。お化け屋敷は却下ね。

『(となるとジェットコースターとコーヒーカップ……、いや一番にこの二つを持ってくる、普通? 絶対気持ち悪くなって戻しちゃう人出るかもしれないし…)』

と一瞬思ったけど自分の周囲を見て、あ。それはないな、と考え直す。

「カントク。」
『んー?』

パンフレットからは目を離さずに黒子君の話を耳に入れる。

「乗り物乗る時は隣失礼してもいいですか?」
『いいわよー』
「(なっ!!その手があったか!!!つか黒子ズ リイイイイイイイ!!)」

黒子君との会話を終えたことでパンフレットを見るのに集中していた私は背後に近付く影に気付けなかった。

「リコー」
「お…っ!?」

隣にいた火神君を押し退け鉄平が背後から私を抱き締めた。

『な…!!』

人前でなにしてんのー!?、と思いつつも嬉しいと思ってる自分に気付き羞恥心で顔が熱くなる。

「ちょっ、おま!いきなり消えたかと思えばカントクに何してんだ、ダアホ!!」
「つか突き飛ばしただろ!?っす!」
「ははっ、引っ張んなよ。服が延びるだろー」
「延びてしまえ!!」
「つーか離れろ!!です!」

日向君と火神君がなんか言っているようだけど生憎私には届いていない。

「木吉先輩ズルいです。」
「んー?」
「僕だってカントクを抱き締めたいです。」
「いやいや黒子。確かにしたいけど普通真顔でしかも今言うか?」
「男には言わなければいけない時があるんです。それが今です!」
「うわっ、男前!!」

あー、本当になんなんだ。冬なのに熱すぎる。人混みだから…ではないのは重々承知だ。

「あはは黒子。さすがにそれをしたらキレるぞ?」

鉄平の腕に力がこもったことで私の心臓が大きく跳ねた。

『(あああ……っ、もう!熱いのよバカ!!)』

しばらく私は鉄平の腕に苦しめられることになるのだけど、それはまた別の話…


君だけ


(リコは良い匂いだな〜)
(ひゃああああ///)
(ゴラ木吉!!調子乗んな!!)
(てかカントク顔赤っ!!)
(可愛いです…カントク)
(黒子。お前ちょっと黙れ。)
(うぅ…っ、ど、どどど…っ)


・終わり・
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