企画
□フレンドシップ
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翌日
「[こちら小金井。容疑者一名確認どうぞー]」
「こちら伊月。こっちも確認できた、どぞー」
「……なにやってるんすか…」
呆れた声に振り返ると一年ルーキー二人がそれはそれは可哀想なものを見るような目でオレ 達を見ていた。
「なにって…見りゃわかるだろ?」
「はあ…」
双眼鏡を構えて容疑者(日向)の周囲にカントク がいないのを確認する。
「[リコの姿が見えんがそっちはどうだ?]」
携帯のスピーカー越しに木吉が言った。
「こちら伊月。こっちもカントクの姿は見えない、どうぞ。」
つか“どうぞ”って言うのめんどくさいな。誰だよ言おうとか言ったの。
「[あ!カントク来たよ!!どうぞー]」
あ、オレか…。
『ごめん日向君!待った?』
「!!?」
なにかを言いながら駆けてくるカントクの姿が目に入った。
「全然待ってねーよ。」
『そう?良かったー』
会話の内容は一切聞こえないが…っ
「(カントク(リコ)が可愛すぎるうぅぅうう!!)」
隣にいた黒子なんて目眩を覚えたのかふらふらだ。
「じゃ、行くか。」
『うん!!』
自然な動作で腕を組んで歩き出す二人。
「(なんて羨ましい…っ!!)」
本来の目的を忘れ、日向に奇襲をかけそうになるがそれは理性で押し止めた。
******
それから約30分を経過しても日向が動かないのでさっそく作戦を開始することにした。
「というわけで火神。」
「あ?」
「すぐこれを装備して木吉と合流しろ。」
「はぁ!?」
「早く!!」
「は、はあ…」
納得できない、という面持ちをしながら火神は渋々路地裏から出ていった。
「火神君に何を渡したんですか?」
「すぐわかるよ。」
にやり、とオレは不敵に笑って見せた。
「[木吉と火神の準備が出来たよ。どうぞー]」
しばらくしてコガからの連絡が届いた。それに「わかった」と一言返すと双眼鏡で日向達に固定させた。
「……」
……来た!!
「!?」
隣の黒子が目を見開いたのが気配でわかった。
「お、おお、おい!!」
「『?』」
日向達に声をかけたサングラスをかけたガラの悪い二人組。でも、その二人組の登場にオレ 達は驚きはしない。
「ずいぶん楽しそうだな、二人共!オレらも混ぜてくんね?」
なぜならガラの悪い二人組の正体は火神と木吉だということがわかっていたからだ。
「[こちら小金井。作戦は順調だよ!]」
「コガ!ナイスじゃナイっすか!!」
オレ達の作戦はこうだ。
ガラの悪い二人を日向が退治し、カントクは“日向君カッコいい!好き!!”となる…。完璧だ!!
「なにしてんだよ。」『なにしてるの?』
「!?」
ん?
「なんか火神と木吉の様子おかしくないか?」
「[そうかな?]」
「黒子。出番だ。」
「………ハァ」
渋々と黒子は立ち上がると人混みに消えていった。
『火神君と鉄平なんて珍しい組み合わせね?』
「な…っ、なんのことだ!?です!」
「つーか、そのサングラスなんだよ。」
「これか?結構似合うだろ?」
「似合わねーよ。ダァホ」『ダサいわ。』
「……」
なにが起こってるんだ?ま、まさか日向の奴ビビってるとかないよな!?
「あれ?」
いきなり目の前が真っ暗になった。
「失敗したみたいですよ。」
「うお!!」
突然目の前に現れた黒子に尻餅をつくが、黒子の言った一言に目を点にした。
「ついでに日向先輩とカントクにバレました。」
「え…っ」
「[ギャアアアアアアアアア!!]」
「!?」
携帯越しに聞こえた声に顔が青ざめていく。
「ということなので御愁傷様です。」
一人、逃げようとした黒子の肩を誰かが掴んだ。
「おーと。黒子。」
『自分だけ逃げるなんて……そんなことしないわよねー』
「……」
だらだらと止めどなく冷や汗が吹き出す。
「『覚悟!!』」
「ギャアアアアアアアアア!!」
フレンドシップ
(しゅびばしぇんでした…っ)
(声が小さい!!)
(すみませんでした!!!)
・終わり・