企画
□ロリコンですが、なにか?
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夏合宿、海。
「……え?」
その合宿では誠凛と秀徳の泊まる宿が同じという偶然を引き起こし、そして合宿二日目の夜。事件は起こった。
「えーと、ど、どちら様…ですか…?」
思わず火神がちゃんとした敬語を話してしまうほどの衝撃。
『かがみくん、なにをいってるの?』
目の前で腰に手を当てて茶色の大きな瞳をつり上げる。その姿は誠凛のカントク、相田リコ のそれだが…
『もう、みんなしてそんなにみないでよ! 』
問題はリコが幼児化していることにあった。
「カントクが小さくなったあああああ!!?」
ロリコンですが、なにか?
「どぅわれだ!カントクに変な物与えた奴は!! 」
開口一番に日向が鬼の形相で部員達に言った。
「お、オレじゃないぞ!?ですよ!」
「僕でもありません。」
「オレはあめ玉あげたがオレはなんともないしオレでもないと思う。」
「…」
「水戸部は違うって!!オレも違うからね!?」「オレ達でもないよな?」
「うん。」
次々と否定をしていく中で伊月がぽんっ、と手を叩いた。
「あ、そういえばカントクさっき味見してたよな?」
一瞬にして場が静まり返り、一同リコを見る。
「……」
『?』
こてん、と首を傾げるリコに一同鼻を押さえリコに背を向ける。
「(かぁぁわあいぃぃぃ!!!!)」
今ならロリコンへの扉が開ける、と思った時だった。幾人かの男達の声が食堂に向かっていた。
「む。こんなところに突っ立って何をしているんだ。」
秀徳だ。
「(ヤバ…ッ)」
何がヤバいのかは置いておくとして、とりあえず木吉の機転でリコを抱っこするとそれを囲むように誠凛一同が固める。
「い、いや。なんでもないっすよ。」
代表して日向が言う。
「怪しいのだよ。」
「何企んでるんだ。言え。」
「終いにゃ轢くぞ。こら。」
疑うように木村と宮地がジトー、と中心の木吉を見る。
「……っ」
ひしひしと背中に伝わる痛いほどの視線に冷や汗が流れる。
「(頼むから気づかないでくれ!!)」
誠凛の願いは惜しくも崩れ去る。
『もう!!てっぺいくるしい!!』
「?」
突然聞こえた幼児の、それも少女の声に首を傾げる秀徳。
「(嘘だろおぉぉぉおお!!!!)」
今の声をどう誤魔化すかを考える暇なく木吉の腕から抜け出し、肩から顔を出すリコ。
「『…』」
場が静まり返り、誠凛&秀徳一同はリコに背を向けた。
「(かぁぁわあいぃぃぃ!!!!)」
鼻息を荒くしながら鼻を押さえ、必死に冷静を気取ろうとする一同の耳にリコの興奮した声が届く。
『すごーい!』
振り返るときらきらと目を輝かせるリコの姿が。
「(クッ、可愛い!!)」
『すごいすごい!!てっぺいすごいよ!!』
「ん〜?何がだー?」
キャキャ、と興奮気味のリコに満更でもない様子で木吉は笑みを浮かべた。 そんな木吉に睨みを利かせるのは言わずもがな、誠凛&秀徳一同。
『てっぺいがおおきくてわたしがおおきい!!』
頭まで少々退化してしまったのか文脈がおかしい。しかし、それさえ可愛いと思えてしまう。
「そーか、そーか!」
それに調子に乗った木吉はリコに高い高いを繰り返す。
「というか。なんで幼児が…?」
我に返った大平の声にギクッ、と誠凛の肩が震える。
「相田に似てるな。」
「でも相田は高校生だぞ?」
ギクッギクッ、と次々と冷や汗が吹き出る。
「なにを言っているのだよ。」
「あ!!」
スッ、と木吉からリコを奪うと緑間はリコを抱きしめた。
「オレにはわかる。この人は相田さんなのだよ。」
「いや。緑間君。だとしてもなんで抱きしめる必要があるんですか。」
少々怒り気味に黒子が声を荒げる。
「可愛いからなのだよ!!」
「逆ギレすんな!!」
バシッ、と緑間を叩くと宮地は緑間からリコを拐う。
「ああ…!」
「たくっ、お前みたいな仏頂面に抱きしめられたんじゃ相田が泣く!!」
「相田泣かせたら轢くぞ、こら!!」と宮地が言うと緑間は盛大にショックを受ける。
「もう大丈夫だからな。」
にこり、と宮地は笑うとリコを見――
「カントク。可愛いですよ。」
る前に黒子によってリコは拐われていた。