企画
□負けず嫌い
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生徒会で部活に遅れて体育館に向かっている時だった。
「おいチビ。」
『あ゙?
不意に後ろから失礼な言葉で呼び止められ振り返る。後に私は、この時振り返らなきゃ良かったと後悔するのだけど時既に遅し。
『って、花宮…!?』
そう、見るからに悪役という立ち位置の花宮がそこにはいた。
『(なんでここに!?)』
花宮に対する警戒と戸惑いで一瞬判断が遅れたのが悪かった。ジリ、と後退りした時には既に右手首を掴まれてしまっていた。
「逃げんな。」
『…!』
花宮の手を無理にでも振り切るのが正解だっただろうに私にはそれが出来なかった。
「お前に用があって来たんだ。話くらい聞け。」
なぜなら、彼には異常なくらい敵対心に相等する気配がなかったから。
『私に…用…?』
強張っていた肩の力をゆっくり抜くと花宮の目を見て言った。
「ああ。」
今まで花宮とまともに対面したことがなかったとはいえ、間近で見た花宮の身体に目が反応した。
『(…予測ではあるけどやっぱり数値が凄い…っ)』
「ふはっ、さっそく目を使ったな。」
『!!』
なんで…!?
「なんで、って顔だな。」
『…っ』
「お前のオレたちを見る目は他とは違うからな。すぐにわかる。」
私の知る花宮ならここで皮肉に歪んだあの顔で皮肉を飛ばすだろうに…、それもない。
『…私に何の用よ…っ』
勝手だけど私は花宮が怖くなった。
まるで見知らぬ誰かのような…こいつが…
「オレはお前が欲しい。」
『……はっ!?』
私が声を上げたと同時に花宮が掴んでいた私の手を引き寄せ、あろうことか顎を持ち上げられ身長差があるとはいえ近い。
『な、にすんのよ…!』
やっぱりこいつは花宮だ!!、と意味のわからないことを思っているとバタバタと忙しい複数の足音が背後から聞こえた。
「チッ…」
「リコ!!」
『て、鉄平!皆!!』
ずんずんと鉄平は近付いてくると花宮から私を遠ざけるように肩を引く。
「…」
でも私は思いの外簡単に花宮が私を手放したことが気になってしまった。
「リコに何するつもりだったんだ。」
「ふはっ、なんだよ木吉。マジになってキモ いんだよ。」
「答えろ!花宮!」
いつの間にか私の前には日向君たちが守るかのように立っていた。
『ちょっ、皆――』
私何もされてない、と続けようとした瞬間
「……ハァ」
うんざりしたように花宮が息を吐いた。
「お前らそのチビの騎手気取りか?ふはっ、マジキモいんだけど。」
先ほどはなかった敵対心がそこにはあった。
「カントクに何の用かって聞いてんだよ!」
すかさず日向君が花宮に向かって怒鳴る。
「何の用ってお前らに言う必要ねーよ。バ ァカ。」
「!!」
火神が一歩踏み出した時だった。