企画

□不滅のリーベ
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「『…マル…!!』」

ずきずきと脇腹が痛んだ。

「『シカマル!!』」

霞む視界の中で仲間が泣いていた。
おいおいおい。なに泣いてんだよ。チョウジ 。いの。オレはまだ死んでないぜ?

「…ハ…ッ」

口を開きたくてもうまく声がでない。
たく…、これじゃあ“心配すんな”も言えねェ。本当にめんどくせーな。

「…ハ…、キ」

しかもアイツの顔まで仲間の後ろに見えてきた。

『シカマル!?』

面もなにもない。真っ白なお前…

「サ…、ラ…ッ」

ああ…、あと一日とは言わないからあと一分、それだけでいいんだ神様。

「シカマル!!」

オレに時間をください。

「サ…ク、ラ…」

アイツに…、サクラに想いを伝える時間を――。

「サク…ラ…ッ」

――好きだ。

「『シカマル!!!!』」

――愛してる。

『シカマルーー!!』

薄れる思考の中でアイツの声が聞こえて、目の前は暗くなった。


******


次に目を開いた時に広がったのは天国とか地獄とかそういう非現実的な場所ではなく。よく知る木ノ葉病院の一室だった。

『あら。起きたの。』

淡々とした声が隣から聞こえてきた。
それが誰かなんてわざわざ聞かなくてもわかってしまう自分に苦笑しながら顔だけ横に向けた。

『本当に…、いつもいつもアンタは最後の最後で気を緩めるんじゃないわよ。』

席から立ち上がるとオレに背を向けて慣れた手つきで点滴を交換するサクラ。

『いのもチョウジも心配してたのよ?』
「…ああ。」
『それにアンタのせいで貴重な休日が潰れちゃうし。まったく…っ、まさか約束してた人物にこんな形で裏切られるとは思わなかったわよ。』

ぶつくさ文句を垂れるサクラにオレは何も言えなかった。
別にサクラが怖いとか煩いからとかそういうことじゃない。

「サクラ。」
『…っ』

ただ…――。

「ごめん。」

振り返ったサクラの頬には透明な滝が流れていた。

「『…』」

ベッドから上体を起こすと沈黙が訪れ、サクラと見つめ合う。

『っ』
「!?」

最初に動いたのはサクラだった。

『バカ!!』

開口一番にそれかよ、という軽口は叩かなかった。

『任務でしくじるなんてバカ!バカなんでしょ!?』
「ぐっ」

ダンッ、と胸板を殴られ軽い酸欠になった。

『私の到着が少しでも遅かったら…っ』
 
トン、次は弱々しい力が胸板を叩いた。

『もう……っ、本当によかった…っ』

『私に心配させるなんて十年早い…』なんて言ってサクラはオレの背中に手を回した。

「(さて…)」

これは抱きしめ返すべきか、それとも正直に照れるべきか…

「(あ。)」

照れ臭さのあまり視線をさ迷わせるとそこには桃色の箱が。

「(あの親父…)」

頬が熱くなるのを感じた。

「…サクラ」
『………………………なに。』

応答までに時間がかかった挙げ句、声はサク ラが不機嫌であることをオレに伝えた。

「…」

不機嫌なサクラの肩を抱き、空いた手で箱を手に取る。

「やる。」

なんとも無難で愛想のない言い方だろうかとは自分でも思う。
けど仕方ねェだろーが。好きな女に目の前で流れた挙げ句、プレゼントを渡す格好ときたら病院の患者服だ。まだ忍服の方がマシって話だろ。

『…ハァっ』

けど、

『本当にアンタはロマンの欠片もないわよね…っ』
「うっせ」

お前が笑ってんなら

『いいわ!受け取ってあげる!!』

どんなに格好悪くたって、めんどくさくたってオレは…

「へーへー」

お前の傍にいてやるよ。

 
不滅のリーベ




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