宝箱

□アルカロージスティックニコチズム
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獄寺くんが部屋を訪れたあとの雰囲気が好きだった。

部屋の中に拡がる煙草の残り香、獄寺くんが拡散しているような。
すうっと空気を吸い込めば気管を通り肺に充ちるそれ、いずれは血液に混ざって身体中を巡り侵すだろうそれは、彼の一部を飽和した酸素。



からだがつくりかえられていく様な錯覚をおぼえた。獄寺くんと、細胞レベルでまじりあってしまえるかのようなそんな、気が、した。

隔てるものすべてを取り去った融和は、甘く閉ざされた眠りのようだとおもう。
醒めない別離しないそれはあるひとつの理想。もう寂しくはならない、一種の終着点。発展性のない永遠の沈黙のようなその希み。




けれど、むしろそれを求めすらして、
…こころを安らげてしまえるような自分は。




……なんてばかなんだろう。


すこしだけ、…泣けた。







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