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□共犯者の葛藤
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なぜ、どうして、いつから、それは、なに?


基本的に俺たちは自己中だ。自分と自分の周りさえよければいいし場合によっちゃ自分さえよければいい。欲望に従順で人の弱みにはとことんつけこむし傷口ほじくり返してネタにして突っ込むコトなんて日常茶飯事だ。ボケとツッコミってのはスピードと正確さが要求される厳しいモノなんだ。…じゃなくて、とにかく性格の悪さなら自覚はあったし、さらにお互いが似ている、という認識も少なからずあった。つまりある程度相手の言動が読めたのだ。

そーいうワケで、今の状況はありえねェェェェ!と叫び出したいものであり、おそらく相手もそう考えているだろうと読めたが、唯一わからないのは一番重要なこの先の展開だったりする。どーすんのコレ。どーなんの一体。

とにかく状況を打破しようと、手探りどころか天地もわからない宇宙にほうり出されたような心許なさで口を開く。
「あ〜…」
声がひっくり返るのが怖くてつい大きめに出してしまったのに相手以上にビビりながら続ける。
「帰んなくていいの?」
バカか俺。いくらなんでもコレはない。イヤ逆に…イヤイヤやっぱないわ。コレはない。しまったなァと思いつつ恐る恐る、しかしそう思ってるのがバレないように隣の男を盗み見た。

隣の男−土方はスパスパ余裕ぶっこいた感じで煙草を吹かしている。アレ?テンパってんの俺だけ?
「言われなくてもすぐ帰る」
彼はまだ長い煙草を携帯灰皿へぎゅうぎゅう押し込むと新たな煙草をくわえた。
「……副長さん。」
「あァ?なんだよ」
「煙草、逆」
一時停止した土方は慌てて煙草をくわえなおしギロリとこちらを睨んだ。そりゃそーだよな。俺だけあたふたしてるってこたァねェよな。少しほっとしてコキッと首を鳴らす。むしろコイツのほうがダメージはでかいだろう。肉体的にも精神的にも。

「…誰かに言うつもりか」
「ハァ?…あァ煙草逆にくわえちゃうなんて誰でも一度はやるって」
「…それじゃねェよ…」
「………………あぁ。」
ソッチのことか。ほとんど溜息のような土方の指摘に思わず自分のトーンも下がる。

「俺が聞きてェよ」
「人に言えるワケねェだろ!こんなッ…」
急に興奮して早口で言ったあと言葉が詰まり顔を手で覆う。なんだかテンパる彼を見ていたら逆に気分が落ち着いてきた。
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