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□『綱渡り』なんてベタすぎる
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偶然街で鉢合わせなんとなく眼が合いなんとなく並び歩きなんとなくラブホやら自宅やら路地裏やらなだれ込む。確認や質問は一切ない。こーいうのってマジどーなんだろう。


世間様はともかく、うちの従業員どもに知れたらコトだ。きっと突っ込みオタクダメガネは「ただれた関係だ」と軽蔑し胃拡張怪力ファザコン娘は「不潔よ!」と叫ぶだろう。コイツの場合は…おそらくあのサド王子が絡んでウチよりひどいことになるだろうな。
だから、秘密。
だから、名前もつかない関係。
まあまだ十代のガキどもに、この矛盾したオトナのイカ臭い切なさがわかってたまるかってのも本音だけど。


「…んっ…集…中…しろっ…」
「あ、こりゃ失敬」

俺の下で苦しそうにしている男にガツンと足で背中を蹴られ少しばかり飛んでいた意識を戻した。
辛そうに紅潮させた顔を歪める下の男−土方は、まあ生理的なモンだろーけどいつもは鋭いその目に涙を浮かべて浅い呼吸を繰り返している。

「…」
その光景はたぶん誰が見ても淫猥で上の男−銀時も例に漏れず下半身をさらに疼かせた。
…オイオイ息子さんよォ。お前が入りたがってる目の前のお相手は男であってどんなに一生懸命タネ蒔いたところで未来に何の変化も生み出さないのよ。無駄で、無意味で疲れるだけの行為なんだぜ?

心の中でいつもの自問自答を繰り返してしまう。相手に確認も質問もできないのだから自分にするしかない。もしかして下のコイツもしているのだろうか。
冷静に状況を分析していた頭とは対称的に体はどんどん熱が加速していきどうにもならないところまで追い詰められる。
(全く男ってのは…)
溜息をつきたかったが次は確実に手が飛んできそうなのでなんとか思い止まる。
と言うより、実はもう複雑な思考をする余裕がカケラごと飲み込まれる寸前だった。
土方のナカで乱暴にうごめいていた指は狙いを定めたように一点ばかり責め続ける。

「…イッ…あっ!…んんっ…」
必死に首をよじり耐える様がエロい。薄い口から漏れる息に鼓膜から頭を揺さぶられ目の前が軽く歪む。

土方のモノに手をかけ強めに指を動かしながら体を起こし唇を捕らえる。漏れる息だけでなく唇そのものも十分凶悪で何度も何度も舐めまわす。
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