通常文

□狡い大人は刺激を愉しむ
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夜のかぶき町。
ネオン輝き何かに飢えた大人たちがさ迷う世界に不釣り合いなストイックな雰囲気と黒の着流しを纏う男は慣れた様子で細い路地へと吸い込まれていった。

(ココ通るたびいつも思うが…)

こんな所に来る客は居るのだろうか。そこにはいかにもギリギリアウトな感じの店が軒を連ねていた。

(今度テキトーに理由つけてしょっぴいてみるか…)
少なからず収穫はありそうだ。無くても誰も文句言わねぇだろ。そんな物騒なことを考えつつ歩いているとドンッと体に軽い衝撃が走った。

「きゃっ。…あらごめんなさいおにーさん」

いかにもなピンクの安っぽい看板のある店の中から出てきた女にぶつかってしまった。女は自分を見て少し顔を赤らめニコリと謝った。

「いやこっちこそすまねぇ。」

どうやらここは風俗店のようだ。女はそこそこ興味を引く容姿だったが目的のあった彼はたいして気にも止めずさっと身を翻した。しかし女の次の一言で彼は勢いよく振り返ることになった。

「次はもっと早く来てねェ銀ちゃん」

「ん〜…ん?」

「「あ。」」




ブーン…かちかちかちかち…

先程から聞こえるのはたまに家電が唸る音と時計が刻む一秒の音のみで空間には白煙が雲のようにゆらめき目の前の男からはイメージピッタリのどす黒い殺気が放たれあまりの居心地の悪さに無意味な身じろぎを繰り返す。差し出したコップについた水滴が零れるのを見ながら銀時は声を出そうとしたが一瞬喉が張り付き咳ばらいをしてから改めて口を開いた。


「んん゛っ…あ〜…と。怒ってる…?」

いくら俺でも彼が怒るのは理解できる。野郎に抱かれる屈辱や肉体的苦痛に何故か耐えているのにそれをする相手の男が風俗で女ともよろしくやってるってのは…。やべ。俺今日死ぬかも。

「…」

いや全然。土方は心の中で即答したが実際は銀時を通り越し遠くを見つめたまま煙草を吸い続けた。

「いやいやいや。そこで無視はないから。沈黙は肯定と同じだから。つーかお前ナニ極妻?やっぱりチンピラ警察なのか?コワイってソレ。テレビの前のちびっこ逃げ惑うッて。」

相変わらずの無表情、ローテンションで銀時は宣った。こいつ逆ギレか。やっぱマダオだな。

「…」



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