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□狂喜乱舞
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不気味なほど大きな満月が地上を支配するように地平線の上、低くに現れた。
ちらほら流れていた雲も逃げるようにどこかへ消える。

夜は、まだ始まったばかり。



「またいらして下さいね」

「おおおお妙さんそれはもしやプロポーズですか!?イヤもちろんお受けしますがやはりココは男の俺が仕切り直して…っぐぼおっ!!!」

「またいらして下さいね」

「…」

正拳突きのあと笑顔で近藤の襟元をわしづかみ懐の財布に向かって話し掛ける女を土方は顔を引き攣らせながら見つめる。

「…オラ近藤さん行くぞ」

「お妙さァァァァん!必ずまた来ますからァァァ!!」


すでにとっくに店に戻って姿の見えなくなってしまった彼女にいつまでも手を振り続ける上司をちらりと見て、土方は心底呆れながら煙草を吹かした。


生温い風が頬を撫で上げ気持ちの悪さに顔をしかめ空を見上げる。

(満月か…)

首を鳴らしながら溜め息をついて横を見ると、幕府お抱え武装警察真選組局長が頭からゴミに塗れて倒れ込んでいた。

「ウフッお妙さァんそこはダメだってばァ」

「…」

無言で携帯電話をとりだし、相手がワンコールで出ないことに舌打ちした。

『ハイやまざ…』

「遅ェ。始末書な」

『なっ!?え…だってこんな夜中に…』

「口応えしてんじゃねェよ。とにかく今すぐ来い」

『ちょっ…待っ』

ブツッ

再び盛大に舌打ちして溜め息をつき顔を上げると、もう一度自分の上司の姿が目に入ってしまい土方は頭を抱えてうなだれたのだった。




「遅ェ。始末書な」

「ええっ!?なにコレデジャブ!?」

息を切らせて来た山崎に目線で促すと彼もまた同じように溜め息をついた。

「またですか…」

「あと頼んだぞ」

「え…副長は戻られないんですか?」

「飲み直しだ」

「ンだよ自分ばっか…」

「あン?」

「イエ別にお気をつけて」

「誰に向かって言ってんだ」


ふてぶてしく煙を吐き出しながら背を向けて行く土方を見たあと、相変わらず地面を抱きしめている自分の組織の頭を見ながら山崎はほんの少し泣きたくなった。






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